見えないものは手に残る ページ47
意外にもその言葉にジベルは止まった。何度も自分の足元と、シャオロンの顔に視線を泳がせて、そして、
「……当主を諦めるつもりはない」
「俺も、諦めるつもりはないで…兄さん」
薄く笑ったジベルは、Aに向けて礼をする。
「非礼をお許しください。」
「…こちらこそ過ぎたことを言いましたわ」
それでは、と彼は寂しさを背負ったまま二人を通り過ぎる。最後に見たジベルの瞳は、最初に見た時に比べて力が宿っておりAには好印象を与えた。
くるり、とシャオロンを見てにこにこと笑う。
シャオロンは髪の毛を掻きながら、小さく「…ありがとう」と呟く。しかしタイミングよく風が吹き、Aは自分のスカートを抑えるのに必死で彼の言葉を聞き取ることができなかった。
「え、?」
「なんでもないわ。」
「ぜったい何か言いましたよね?」
「お、この短時間でボケたんか」
「む。からかうのはおやめになってくださいませ」
無言になったシャオロンを不思議に思うAは、見上げる。彼はなんともいえない温かい眼差しを向けてAを見ていた。きっと、他には見せたことないだろう甘い顔。
散々煽ってきたこの男が急に態度を変えるから、Aは困惑する。何か裏があるのでは?と内心ドキドキしっ放しであり、無言でその顔を見つめ返す。
「…来年は絶対に一位獲るで」
「…えぇ、楽しみにしております」
「せやから、また来年も俺にマント作ってくれるか?」
Aは首が取れるのか、というほど強く頷く。シャオロンは声を出して笑って、「頼むわ」と彼女の頭に手を置いた。
.
..
...
久しぶりにAは呪いの書を開く。
内容は大きく変わっていた。…しかし残念ながら処刑される運命は変わっていなかったが。
本の内容はいつもと変わらずAが処刑されるところで終わっている。
貧困街の流行り病を防ぎ、国内の貧困の差を埋めたAの功績とともに、その後大きな戦争が起こることが書かれていた。
もちろん、その敵国はストラスブールの仇敵であるゼネバス帝国だ。グルッペン・フューラー率いる敵国はストラスブールに進軍し、王の首を取った。そして王族であるAの首も要求した。
前と違うものといえば、トントンだけでなく倭国やリオルディ商会も力を借りていたということか。
「どうやったら処刑台を回避できるのですか…」
A・ラ・ストラスブールの足掻きはまだまだ続くのであった。
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枕の怨念ぅ - 凄く親近感の湧く小説でした!面白いです! (11月18日 16時) (レス) @page5 id: 7f1a8024d0 (このIDを非表示/違反報告)
くれぴと - 夢主様考えることが言い方悪いけど欲望に忠実すぎて逆に幼子みたいで少し可愛らしいと感じる自分がいる...これうちだけかな? (5月7日 20時) (レス) id: e2b452ca9a (このIDを非表示/違反報告)
春風駘蕩(プロフ) - コーネコネコーネは笑う⋯めっちゃニヤついてしまった⋯ (2022年9月17日 23時) (レス) @page14 id: 34351208ff (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - knさん…名前めっちゃコネるやん…不覚にもねるねるねーるねを思い出してしまった…。すみません…。 (2020年12月11日 5時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - こすずめさん» コメントありがとうございます…!一応チラッとだけ概要に書いているのですが、バチコリと読んでおります!元ネタは某なろう系のものです!お褒めの言葉並びに応援のお言葉をありがとうございました…!本当に励みになっております! (2020年9月14日 2時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
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