検索窓
今日:40 hit、昨日:158 hit、合計:1,174,769 hit

最初で最後の誓い ページ23

Aは歓迎パーティーのことを思い出ているのか日付を越したにと関わらず上機嫌であった。王宮から持ってきた分厚い本をを膝に起き、その表紙を爪で鳴らしている。そんな彼女の髪を櫛で解いていくのは、彼女の執事のエーミールだ。

「いいことでもあったのですか?」
「えぇ。とっても」

 主人の笑顔を見て、エーミールもまた嬉しくなる。艶やかな彼女の美しいブロンドはまるでシルクのようだ。いずれ国の王となる人物の髪の毛をメイドでもない自分が手入れをしていることに疑問を思いつつ、この時間をエーミールは密かに楽しみにしていた。
 
「ねえ、エーミール」
「はい。」

 鏡越しに、Aがエーミールを見ていた。その顔からは笑みが消えている。

「もしわたくしが国民に処刑されるとしたら貴方はどうしますか」

 凛とした顔つきで話すAは冗談を言っているようには見えない。エーミールは喉を鳴らして主人の出方を伺う。相変わらず何を考えているのか分からない聡明なサファイアがこちらを見やっているだけだ。これは本心からの言葉を言わなければ彼女にバレてしまうに違いない。エーミールはゆっくりと薄い唇を開く。

「なぜ、そのようなことを…?」
「国が傾けば、それはわたくしたち王族のせいになりますわ。これから先、ストラスブールが傾かない保障なんてどこにもありませんからね」
「……確かに、ストラスブールは大国であるが故に貧富の差が激しい国でもありますが…」

 エーミールは自分の親友のことをふと、思い出した。エーミールが王宮に仕えると決まった日から、会うことのなくなった貧困街の親友を。最後に会ったあの日、彼の目には憎悪が浮かんでいた。

 世界が羨む美しい国、ストラスブールの現実は、貧困層から得られるものが大きい。光があれば闇がある。それはどの時代も、どの王国も変わることがない。

───しかし、A様は一体なぜこのようなことを…?

「わたくし、次の休みで一度国へ帰ろうと思うのです。そこで貧困街を偵察する予定ですわ」
「…はい?」
「わたくしの目標は、貧困街の消滅ですから」

 ブルーサファイアが奥底から輝いた。

───あぁ、この方はどこまでも…。

 エーミールは思う。もし彼女が処刑されるような日が来るのならばその時は、最期までどこまでも共にすると。全世界が彼女の敵になっても自分だけは最期まで彼女の手の中にいる駒であると、心の中で誓いを立てた。

立ち向かうことだけが勇姿ではない→←巡り巡って、あなたを知る



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (923 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
2077人がお気に入り
設定タグ:wrwrd! , d! , 軍パロ   
作品ジャンル:ラブコメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

枕の怨念ぅ - 凄く親近感の湧く小説でした!面白いです! (11月18日 16時) (レス) @page5 id: 7f1a8024d0 (このIDを非表示/違反報告)
くれぴと - 夢主様考えることが言い方悪いけど欲望に忠実すぎて逆に幼子みたいで少し可愛らしいと感じる自分がいる...これうちだけかな? (5月7日 20時) (レス) id: e2b452ca9a (このIDを非表示/違反報告)
春風駘蕩(プロフ) - コーネコネコーネは笑う⋯めっちゃニヤついてしまった⋯ (2022年9月17日 23時) (レス) @page14 id: 34351208ff (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - knさん…名前めっちゃコネるやん…不覚にもねるねるねーるねを思い出してしまった…。すみません…。 (2020年12月11日 5時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - こすずめさん» コメントありがとうございます…!一応チラッとだけ概要に書いているのですが、バチコリと読んでおります!元ネタは某なろう系のものです!お褒めの言葉並びに応援のお言葉をありがとうございました…!本当に励みになっております! (2020年9月14日 2時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:鳩山 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年5月31日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。