春の星は微かに瞬く ページ33
「数日空けただけですのに久しぶりに感じますわね」
「そうですね」
「ふーん、ここが貴族が通う学園なんかぁ」
Aは従者としてエーミールを、護衛としてゾムを連れてノルベルト学園へと戻ってきた。学園では既に休暇から戻った生徒達もいて、ゾムはそんな貴族達を物珍しそうに眺めている。
「明日からまた、始まりますのね」
「はい。A様、部屋に戻られましたら復習をやりましょうか。ゾムさんも少しずつでありますが私が教育させていただきますので」
「「え」」
エーミールはいつも通り穏やかな笑みを浮かべている。しかし、その背後には有無言わせないようなオーラが漂っていた。
「A様、本当は早くお伝えすべきでしたが…休暇中の課題もまだ終わっていませんよね?」
その言葉にギクリと肩を跳ねらせる。
「ゾムさん、あれだけ昔から字の読み書きは出来る様にと散々口を酸っぱくしてたのに…まだ出来ないそうですね?」
Aと並んでゾムもまた同じように跳ねた。
「二人とも、確かに休暇中は忙しかったことは分かります。しかしいかなる理由があったとしても学ぶことから逃げてはいけません。知識はきっと、身につけた分だけお二人を救ってくれますから」
知識欲の塊のエーミール。Aは前世でも同じようなことを言われて腹を立てていた記憶を思い出す。それと同時にゾムも幼なじみと喧嘩していた思い出を頭に浮かべていた。二人の宝石色の瞳は悲しくも今は暗くハイライトが消えていたのであった。
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「なぁ、A様。あんたようエミさんを従者に選んだな…」
「わたくしも今、後悔してたところですわ…」
夜が深まり、辺りには静けさだけが漂った頃。ゾムとAは冴えてしまった目を落ち着かせるために寮の近くを散歩していた。
夜空には煩いばかりに星が散りばめられており、ひとつひとつが宝石のように輝いている。上を見上げているAをみて、つられるようにゾムも上を向く。
「…この学園にはね、言い伝えがありますの」
「言い伝え?」
Aのサファイアが愉しそうに輝く。
「えぇ。年が終わりを告げる星空祭というお祭りがありましてね、その祭で恋人と星空を眺めることができたら永遠に幸せになるんですって」
ありきたりな言い伝え。それでもAは冬の星が春よりももっと美しいと知っている。だから、今世の星空祭では自分に相応しい殿方を見つけて共にしたい、と心底思ったのだ。
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枕の怨念ぅ - 凄く親近感の湧く小説でした!面白いです! (11月18日 16時) (レス) @page5 id: 7f1a8024d0 (このIDを非表示/違反報告)
くれぴと - 夢主様考えることが言い方悪いけど欲望に忠実すぎて逆に幼子みたいで少し可愛らしいと感じる自分がいる...これうちだけかな? (5月7日 20時) (レス) id: e2b452ca9a (このIDを非表示/違反報告)
春風駘蕩(プロフ) - コーネコネコーネは笑う⋯めっちゃニヤついてしまった⋯ (2022年9月17日 23時) (レス) @page14 id: 34351208ff (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - knさん…名前めっちゃコネるやん…不覚にもねるねるねーるねを思い出してしまった…。すみません…。 (2020年12月11日 5時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - こすずめさん» コメントありがとうございます…!一応チラッとだけ概要に書いているのですが、バチコリと読んでおります!元ネタは某なろう系のものです!お褒めの言葉並びに応援のお言葉をありがとうございました…!本当に励みになっております! (2020年9月14日 2時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
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