首が繋がっていることがどれだけ幸せか ページ2
「…っ…こ、こは…」
目が覚めるとフカフカのベッドにAは横になっていた。あぁ、ここが天国か。と再び目を瞑る。あれだけ多くの人間に恨まれた自分がまさか天国に来れるとは、神様万歳である。彼女がそんな至極どうでも良いことを考えていれば、コンコンと遠くからノックが鳴る。
───あぁ、懐かしい。私が寝坊しているといつも口煩い執事が起こしに来たのを思い出しますわ。まあ結局、睡眠時間を邪魔された腹いせにその執事はクビにしたのですけど。
クスクスとベッドの上で笑うA。自分が処刑された身でありながら無自覚なのも、また非常に虚しいものだ。
今もまだ鳴り響くノック音はコンコンなんて可愛らしいものではなくドンドンと取り立ての貴族のようになっていた。天国とはいえしつこすぎないか、と彼女はついに目を開けて、重たい腰を上げる。そして辺りを見渡して気づく。
「…わたくしの、部屋」
一人部屋にしては十分な広さを持ち、清潔に保たれた部屋は間違いようもない自分の部屋。枕元には幼い頃に父から貰ったクマのぬいぐるみまで置かれている。見間違いもない、自身の部屋にますますAは困惑する。
「失礼します。A様。もうお時間過ぎておりますよ」
「………え、えーみーる……?」
ノック音の正体はA専属の執事であった。モノクルを掛けた淡いショコラ色の彼が執事服を着てAの返事など気にせず部屋に入る。締め切っていたカーテンを開き、いい笑顔を浮かべて振り返った。
「さあ、A様。今日は楽しみにされていたノルベルト学園の入学の日であります」
カーテンを開けられたせいでAの肌が直接光に当てられる。咄嗟に目を隠そうと手を出して、彼女はハッと息を漏らす。
あれだけボロボロになった手が、今や若返ったように白く、艶やかで、美しい。
さらには今、執事はなんと言ったか。Aの耳には確実に入学の日と聞こえた。しかしそれも先に彼女は彼へ聞きたいことがあった。
「…何故貴方がここに…?」
「何故ってそれは私がストラスブール家の執事だからですよ」
色素の薄い目を丸くして彼は首を傾げる。
「わたくし、貴方をクビにしたわよね」
「えっ クビにするおつもりだったんですか!?」
大袈裟にエーミールは目を開く。穏やかな王族の朝に彼の素っ頓狂な声が響き渡るのであった。
Aはそんな彼を無視してベッドから起き上がる。すると、バサリと彼女の体の上から何かが落ちる音がした。
呪いの書の処分はお早めに→←晴天による祝福は受け付けておりません
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枕の怨念ぅ - 凄く親近感の湧く小説でした!面白いです! (11月18日 16時) (レス) @page5 id: 7f1a8024d0 (このIDを非表示/違反報告)
くれぴと - 夢主様考えることが言い方悪いけど欲望に忠実すぎて逆に幼子みたいで少し可愛らしいと感じる自分がいる...これうちだけかな? (2023年5月7日 20時) (レス) id: e2b452ca9a (このIDを非表示/違反報告)
春風駘蕩(プロフ) - コーネコネコーネは笑う⋯めっちゃニヤついてしまった⋯ (2022年9月17日 23時) (レス) @page14 id: 34351208ff (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - knさん…名前めっちゃコネるやん…不覚にもねるねるねーるねを思い出してしまった…。すみません…。 (2020年12月11日 5時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - こすずめさん» コメントありがとうございます…!一応チラッとだけ概要に書いているのですが、バチコリと読んでおります!元ネタは某なろう系のものです!お褒めの言葉並びに応援のお言葉をありがとうございました…!本当に励みになっております! (2020年9月14日 2時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
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