二十五本目 ページ28
あの後冷や汗を掻きまくったトントンにより案内されたのは、ゾムの天幕だった。
ゾムの天幕には人っ子一人寄り付かない。また胡人だからとかそんな理由なのだろうか。本当に人とは愚か者ばかりだ。
「…で、いつまでブスくれとんの？」
「…む。ゾム一人で黄軍に入って虐められたいないかずっと心配していたのに…感動の涙もなしに冷たくあしらわれるとは思ってもなかったの！」
「我儘なところは変わらずやなぁ」
カラカラと彼は笑いながら服を脱ぐ。
服を、脱ぐ…？
「え、ぞむ…な、なにして…」
「んあ？………あ、すまん。背中に砂が入って気持ち悪かったんよ」
上裸となったゾムの背中を見て、言葉を失う。
何年振りかに見た彼の背中。逞しく、また、大きくなった。
拠点で見た距離をまた感じてしまって胸が痛くなる。自分の中の何かが、壊れてしまいそうで私は彼の腕をとる。そして白く細い自分の腕と彼の腕を並べた。
「…はは、ちっこいな」
「…これでも背は伸びたの」
「俺はもっと大きくなるで。」
その声は冷え切っていた。
お前なんて必要ない、そう言われた気がしたのだ。
「なぁ、Aは…何でここに来たん？」
「え、」
「俺は、あんたに来てほしくなかったんや」
新緑の瞳が私が離れる。
胸が、痛い。
私のものだった彼が、私の手から滑り落ちた。
私は彼にかける言葉はなくて、そのまま天幕から飛び出す。ゾムはそんな私を追いかけることはなかった。それが答えだ。
.
.
ずっと一緒に過ごしてきたのに一人だけ"大人"になったような顔をして。
それなら私はなんなのだろう。子供にしては老けていて、大人にしては幼過ぎる。割り切れるものも割り切れない私は、一体。
ぐるぐる、脳内が誰かにかき回されているように揺れる。
「───女だ。」
「は、」
「…お！想像以上にいい女ではないか！あんたこの近くの
「よせって…まだ子どもではないか」
「何言ってんだ。身体はもう大人だ！」
「ちょっ、離して…っ」
無理矢理兵の一人の男に肩を掴まれる。回された手は、ゾムのものよりもゴツゴツと岩のようで抵抗しようにもビクともしない。
騒がれたら面倒だと、男の一人が私の口を塞ぐ。その手に噛みつこうかと思っていれば「その女は俺が面倒見ている」と低い声が響いた。
「高いぞ？」
愉快そうに男らをけしかける声。
口を抑えられてその声に向けると、紅の瞳と目があった。
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鳩山(プロフ) - 妹。さん» コメントありがとうございます…！後半は色々と盛り込んでしまいましたが楽しんでいただけたなら幸いです。ご愛読本当にありがとうございました…！ (2020年10月17日 11時) (
レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
妹。(プロフ) - 友人に勧められて拝見させて頂きました。原作も知っていたのですが、原作の終わり方は中々はっきりとはいかなかったと思うので、急展開でも寧ろバリバリのハッピーエンドになってるのが個人的にめちゃくちゃに好きです。ほんとに良かった。涙ながら読みました… (2020年10月17日 4時) (レス) id: 15a5300c38 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ものくろ。さん» コメントありがとうございます…！原作を読み、感動のあまり書き殴ったものですが楽しんでいただけたようで何よりです…！最後までお付き合いしていただき本当にありがとうございました…！ (2020年8月3日 15時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
ものくろ。(プロフ) - とても面白くて一気に読んでしまいました（笑）私も原作を読んだことがあり「もしかして…」と読み始めたこの作品ですが本当に楽しませてもらいました！原作久しぶりに読み返そうかなと思ってみたり…笑 最後までありがとうございました！お疲れ様でした！ (2020年8月3日 15時) (レス) id: f4afc82ded (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 野々宮蓮花さん» 野々宮先生……あ、ありがとうございます！語彙なんて必要ありません、感想を下さったことに涙が出てきてしまいます。最後までお付き合いしていただき本当にありがとうございました。私は幸せです。 (2020年7月13日 19時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
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