何度だって告白を (ページ42)

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至近距離で見つめ合う形になった俺たちは、多分必死でどうすればいいのか模索していた。
ここで引き返して、一瞬の過ちをなかったことにするか、それともいっそのこと全部伝えてしまおうか。

その二つの選択肢とは別に、行動は変な方向に向かってしまったようだ。

見つめ合ったまま距離を縮め、近くで目を閉じる。
何年も一緒にいたけど一度も触れたことがなかった場所。二人の唇が柔らかく重なる。

もう戻れないと確信する。
ごめん、みんな。最初にルールを破ったのは俺だ。
唇を離してAを見つめる。

『好きなの』

震える声で言うAは何か大きな物を抱えているみたいで、とても苦しんでいるように見えた。

え「恋愛禁止のルール、どうにかしよう」

『ううん』

なぜか首を横に振る。

『なかったことにしよっか』

え「は？」

『今のはほんの一瞬の出来事だったし、きっとすぐ忘れる。忘れちゃう』

その瞬間Aは切ない表情で下を向いた。

『忘れられるから、なかったことにできる。だからえいちゃんも、ね』

自分勝手なAに心底腹が立った。
あれだけのことが起こった一瞬を、そう簡単に忘れられるわけあるか。

え「俺がさっきなんて言ったかわかってる？」

『好きだって』

え「そう。俺さ、お前のこと好きなんだけど」

『嬉しいけど、ダメだよ。そんなことみんなに言えない。裏切りになる』

他の三人のことを気にしてる。
みんなが怒るとは思えない。大体なぜかみんな察してたし。
だから別に俺たちが恋仲になったとしても今更なわけだ。なのにそんなに嫌がるのには訳があるのか。

『ほんの一瞬の過ちなんだよ？なかったことにできる。大丈夫』

え「何が大丈夫なんだよ。そんなに嫌かよ俺のこと」

『そんな訳ないでしょ』

え「じゃあなんで」

『だから言ってるじゃん。ルール破り、裏切りだよ』

え「バカじゃねえの」

『バカじゃないよ。ちゃんと冷静に考えた結果こう言ってるの』

喧嘩のようになってしまった空気を落ち着けるように続ける。

『誰にも、言わないでおくから。私は、みんなのことが好きだから。だから今の一瞬でこれまでの時間をなかったことにはしたくない』

え「…わかった」

納得のいく話ではなかった。
だけどこれ以上何も言わせまいとでも言いたげなAの意志に飲まれた。