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校門を出てから、私たちはしばらく沈黙したままだった。
(何を話されるんだろう……)
辺りはもう暗く、車通りも少なく静かで、私たちの足音だけが響いていた。
が、突如、その静寂の間は、緑間くんの呼びかけにより崩される。
「橋本」
「はい」
名前を呼ばれただけなのに、彼の芯のある声は、私の全身に響きわたり刺激した。
なぜならその声は、いつになく真剣だったからだ。それがヒシヒシと伝わり、私は緊張して息を飲む。
「俺は、お前の悲しむ姿見たくない。笑っている姿を見たいのだよ」
「急にどうしたの?」
唐突な発言に少し困惑したが、彼はさらにこう続けた。
「……最近、お前のことを考える時間が増えたのだよ。お前が俺以外の男と楽しそうに話しているところを見ると、イライラするのだよ」
私は彼の話を黙って聞いた。そして、少しずつ、少しずつ私の脈が、早くなっていく。
「今までその理由がわからなかったが、先日やっと気づいた」
そこまで言うと、緑間くんは急に立ち止まった。本当に急だったから、私はほんの少し彼より前に進んでしまっていた。
だから、すぐに彼を振り返った。すると、緑間くんの顔が、街灯に照らされてよく見えた。
とても、真剣で何かを決意した顔だった。でも、威圧的ではなくって、どこか柔らかかった。
思わず彼の顔に見惚れていると、いつのまにか私たちの視線は絡まり合っており、目を逸らせなくなってしまった。
それから、緑間くんが一息ついて、こう言った。
「橋本。俺はお前が好きなのだよ」
「え……」
「だから、その、付き合って欲しいのだよ」
「な、んで……」
彼の言葉が脳に直接響いてきて、理解するよりも先に身体が反応していた。
「何故泣くのだよ?!やはり泣くほど俺が嫌いなのか?」
無意識に涙がポロポロと流れてきていたのだ。私の涙を見た緑間くんが焦りだし、急に自信なさげになった。
「ううん……私も、緑間くんが好き、だから。嬉し涙だよ」
私は緑間くんを安心させるように、そう返した。
「……本当か?」
彼の不安そうな声が聞こえた。もう、嬉し涙って言ったのに。
「うん……助けてもらううちに、好きになっていったみたい。だけど、振られるのが怖くて、ずっと言えなかったんだ。もし、私でよければ、お付き合い、させてください」
私は溢れてきた涙を拭い、最後に、笑顔で緑間くんにそうお願いした。
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ゆう(プロフ) - めちゃくちゃ大好きな作品です…、嫌い者同士がいつの間にかお互いを意識し出すという私の性癖にぶっ刺さりの作品でした…。終わってしまったのが悲しいぐらい作者さんの緑間が大好きでした。素敵な作品をありがとうございました (11月9日 8時) (レス) id: da835a1297 (このIDを非表示/違反報告)
いちご大福(プロフ) - 緑間よ、早よ告れ。そして鈍感にも程があるぞ。 (2022年6月11日 15時) (レス) @page35 id: a070048203 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時:2022年5月25日 11時