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入学当初から部活で関わっている彼とは、おは朝占い好きという共通点があり、すぐに仲良くなった。彼はお姉ちゃんと同じクラスで、席が近いみたいだった。だけど、彼もお姉ちゃんもお互いに好いていないみたい。お姉ちゃんに彼の話をしたとき、すごく嫌な顔をされた。
でも、私と高尾くんみたいに2人には仲良くなってもらいたくて、一緒にお昼ご飯を食べてもらうようにしたんだ。
最初は2人とも渋い表情だったけど、次第に受け入れてくれたというか、抵抗するのを諦めたようだった。
……最初は本当に、お姉ちゃんと彼に仲良くなってもらいたかっただけだった。でも彼のことを知っていくうちに、私の中で彼に対してある気持ちや思いが生まれ始めた気がした。
それに気づいたのはごく最近で、まだボヤッとしたままで言葉では表せなかった。さっきまでは。
『真ちゃんは?見たことある?Aちゃんが笑ってるとこ』
『……一度だけあるのだよ』
昨日のことだ。
彼がお姉ちゃんの笑顔を見たことあるなんて、信じられなかった。いつもお姉ちゃんは彼の前ではムスッとしているし、彼も同様にお姉ちゃんの前では眉間にシワが寄っているからだ。
でも、信じられないという驚きより、私でさえあまり見ないお姉ちゃんの笑顔を見た……これ以上、お姉ちゃんには彼とは仲良くなってほしくないという嫉妬心が出てきた。
その独占欲は何から来るものなのか、私はあの時からずっと考えていたけど答えは出なかった。
ーーーコンコン
午後8時半、部屋のドアが鳴る。
「はーい」
「俺なのだよ」
「緑間くん?!」
思わぬ人の登場に胸が弾む。私はすぐにドアを開ける。と、視界に入ったのは緑間くんと、彼に抱っこされた姉だった。
「っ?!」
「台所で寝ていたのだよ。起こそうとしたが断念して運んできたのだよ」
「そうだったんだ。ごめんね!あ、今布団敷くから入って!」
私はそう言って彼を部屋へ招き入れる。
緑間くんはお姉ちゃんを布団に寝かせてから、すぐに出て行った。
「はぁ……」
さっきの緑間くんとお姉ちゃんを見て、彼へのこの気持ちがなんなのか、ようやく気づいた。
2人に仲良くなってほしいって思ってたのに、今は2人に仲良くなってほしくないって思ってる……嫉妬してる。本当に自分勝手だと思う。でも、私の中で芽生えたこの気持ちはもう取り消せない。
「……すき」
私は姉に聞こえないように小さく小さくそう呟いたのだった。
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作者名:ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時:2022年5月10日 16時