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Aちゃんとはぐれてしまってから、一応あたりを捜索したけれど、見つからなかった。
(クッソ……!Aちゃんの連絡先分かんねーし……!)
どうしようもなくなった俺は、梨花ちゃんに電話をかけて状況を報告した。
最初は明るいトーンだった梨花ちゃん。だけど、Aちゃんの失踪を知って、不安げな声に変わった。けど、不安とか何か、そうじゃないことを思っている声だとも感じた。
電話を切ってから、もう一度Aちゃんを捜し始めようと動き出す。でも、それを阻むかのように、すぐに俺の携帯が鳴った。
画面を見て相手を確認すると、さっきまで電話をしていた梨花ちゃんだった。
「梨花ちゃん、どしたー?」
『……高尾、くん』
電話越しの梨花ちゃんの声は、どこか悲しげでいまにも泣きそうだった。
「……なんかあったのか?」
いつものような俺を取り繕って、質問する。
『……緑間くん、お姉ちゃん捜しに行っちゃって……1人になっちゃった……』
「っ!」
声が、震えていた。
「梨花ちゃんとこ、すぐ行くから、場所教えて」
俺は梨花ちゃんに居場所を聞き、梨花ちゃんの元へと急いで向かった。
(真ちゃんが梨花ちゃんを置いて、Aちゃんを捜しに行った?)
梨花ちゃんの所へ走って向かう途中、俺は心の中で真ちゃんのことを考えていた。
たしかに、なんとなく最近、真ちゃんとAちゃんの距離感が近づいた気がしてた。いや、最近っていうと語弊があるかも。
思えばあの日、期末テストの初日に、Aちゃんが閉じ込められてしまったときから、彼女に対する真ちゃんの反応がおかしかった気がする。
非常事態だったから、というのもあったし、ぶり返す話題でもなかったため、あれ以降、その件についての話は出ていないが、今考えてみると違和感がある。
俺は自分で言うのもなんだけど、視野が広いから、よく人を観察してる。だから、たぶん本当は真ちゃんの違和感に気づいていた気がする。
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作者名:ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時:2022年5月10日 16時