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「真ちゃん、あそこの綿飴買ってみよーよ!」
「あのたこ焼き、美味しそー!」
「はい、真ちゃん、ベビーカステラ!」
今日はやけに梨花のテンションが高い。先ほどからせこせこと屋台を周っている。
そこであることにふと気づき、後ろを振り返る。
「ん?」
「どうしたの、真ちゃん?」
梨花が俺を見上げて尋ねてくる。
「橋本と高尾がいないのだよ」
どうやら置いていってしまったようだ。
「……あ、ほんとだ。連絡来てないか、確認してみるね」
ほんの一瞬、梨花の表情が曇った気がしたが、気のせいだろうか。
「高尾くんとお姉ちゃん、2人でいるってー。たぶん大丈夫だよ!」
「そうか……ならいいのだが」
高尾から一報があったのか、梨花が俺に言い聞かせるようにそういった。
俺が橋本を心配しているのには、理由があった。今日のおは朝占い、魚座は12位だったからだ。
ヤツ自身は占いをあまり信じていないが、過去に橋本が事件に巻き込まれてきた日は、大体魚座の運勢が悪い日だったからだ。ゆえに、今日も少し心配なのである。
しかしまあ、高尾がいるなら大丈夫だろう。俺はそう思い、橋本のことを考えるのをやめた。
あと40分ほどで花火が打ち上げられる時間となった。
「真ちゃん、どうする?もうそろそろ場所取る?」
屋台の方はもう満足したのか、梨花が俺にそう尋ねてくる。
「俺は立見でも構わないのだよ」
俺はわざわざ場所取りをしなくても花火ぐらい観れる。
「えー、それは真ちゃんが身長高いから見えるだけでしょ!」
俺の返事に梨花が怒ってくる。すると、梨花の携帯が鳴った。
「あれ、高尾くん?」
画面を見て誰か確認する梨花。相手はどうやら高尾のようだ。確認してからすぐに梨花は電話に出た。
「もしもしー?」
『……が……て!』
「え……わかった」
途切れ途切れだが、電話越しの高尾の声が慌てているのがわかった。要件が終わったのか、梨花は電話を切った。
「何かあったのか?」
俺は梨花に尋ねるが、答えようとしない。
「……梨花、教えるのだよ」
妙に思い、俺は少し苛立ちながら問い詰める。すると、梨花が声を震わせながらこう言った。
「お姉ちゃん……いなくなっちゃった……」
「っ!」
それを聞いた俺の体は、無意識のうちに動きだしていたのだった。
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作者名:ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時:2022年5月10日 16時