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同時に掴まれていた右腕が、ものすごい速さで解放される。
(ハハッ……分かりやすいなぁ……)
でも、向こうも話しかけた手前、何か話さないといけないと思ったのだろう。
「ひ、久しぶりだね」
「うん、久しぶり……」
「君はなんでここに？」
「えっと、バスケ部の合宿の、ヘルプで……」
「そうなんだ」
話しかけられた時とは、全然違う声のトーン。名前すら、呼んでくれない。
(早く、帰りたい……)
どうせ向こうも早く話を終えたいはずだし、大丈夫。そう思っていた。
「ねえ、もしかして……梨花ちゃんも来てる？」
「っ……うん」
「マジ？！俺、今バレー部の合宿で来てんだけど、梨花ちゃんも合宿で来てんでしょ！うーわ、運命じゃん！」
彼は本命の梨花のことを聞いてきた。嘘をついてもどうしようもないので、俯きながら正直に答えれば、やはり食いついてくる。
「ね、梨花ちゃんに会わせてよ！いいだろ？実はこのまえ携帯変えた時に連絡先消えちゃってさー、梨花ちゃんと交換し直したいんだよー！」
興奮しているのか、私に詰め寄りながらそう頼んでくる鈴木くん。彼が近づいてくるとともに、私の体はだんだんと硬直していく。
「ね、合宿所まで案内してよ！」
彼がついに私の両肩を掴む。
(助けて……)
心の中でそう叫んだ時だった。
「A、行くのだよ」
名前を呼ばれた。
「っ？！」
あり得ない。そんなはずない。そう思いつつ、振り返る。それと同時に、体の重心が左に傾く。
「悪いが、俺たちは遊びに来ているわけではないのだよ」
鈴木くんより10数センチ身長が高い彼は、キッパリとそう言って、そのまま掴んでいた私の左手首を引っ張って歩き出したのだった。
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作者名：ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時：2022年5月10日 16時
