二年 E組コバンザメ (ページ22)

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31 変身すいみんぐ？ページ22

とうとうこの季節、この授業が始まった。

人前で元の姿に戻る授業。

「フロイド、プールサイドは走らない！危ないです」

はしゃぐフロイドを注意するアズールの手には四人分の薬が握られている。

それを飲めば、元の姿だ。

アズールの薬は普通のものと違って戻るときに痛みが無い。

殆どの生徒がプールサイドに集まってきたところで、バルガス先生が元の姿に戻って良いと指示を出した。

体力育成の授業は、AB組とCDE組で二つに分かれるクラス合同授業だ。

そのため私達は四人とも同じ授業になれた。

一授業の生徒数が多いため、プールもそれなりに大きい。

流石は名門魔法士養成学校、といったところだ。

「ヒャッホー！はやく子ザメちゃんもおいでよぉ」

「今日は晴れているので、少し温かいですよ」

「おっと、気をつけてください。僕の足がのびているので」

水をバシャバシャとやるフロイドと、少し潜って再び顔を出したジェイド、アズールは入ってきた他の生徒にタコ足を踏まれそうになっている。

「それじゃあ、私も〜」

薬を飲むと同時にプールへジャンプする。

空中で光った私の身体は水に入るときにはもう元の姿に戻っていた。

ジェイドが出した腕に背中をつける。

「ありがとー、ジェイド」

「いえ、テーネが万が一にも踏まれてしまったら大問題ですから」

四十五センチになった私をやっとのことで見つけたバルガス先生が、全員いるなと呟く。

一年生のときこそ驚かれたが、今では皆私のこの状態も見慣れたものだ。

私はあくまでコバンザメであって、人魚では無い。

だから元の姿は一メートルもあるはずは無いし、上半身なんて概念も無い。

見たまんまのコバンザメである。

ジェイドが泳ぎ出したので、私は腕から背中の吸盤を離してジェイドの上、背中にくっつきなおした。

吸盤は背中にしかないから、お腹を上にしてくっつくことになる。

フロイドが私のお腹を擽った。

「今日はジェイドにくっつくんだぁ」

「うん。フロイドはあしたねぇ」

「アズールは？」

「アズールくっつきにくいからやだ」

「やだって、アズール」

「なっ、しょうがないでしょう、タコなんですから」

「食べていい？」

「…はい？」

余り無駄話をしていると先生に叱られますよ、とジェイドが言ったちょうどそのタイミングで、バルガス先生がフロイドに注意した。

「なんでオレだけぇ、アズールもじゃん。ねー、子ザメちゃん」

「ふふっ」

今年の授業も楽しくなりそうだ。