その漆 ページ9
「どうされました？カーズ？」
「お前に、言わなくてはならないことがある」
カーズは今までになく真剣にそう言った
「………………お前は、輪廻転生を知っているか」
「知っていますが、」
「ならそれを信じるか？」
「……私はあまり信じておりません」
「そうか、だが、今から話すことはそれに関わる」
「そうなんですね」
〜〜〜
「かつて私には恋人がいた」
「美しい女だ、そしてどんなやつにも変わらず優しい、最高の女だ」
「どんな言葉でも表せぬほど愛していた」
カーズは昔の恋人の話をした
そんなに、いい人がいたなんて
そんなに、彼に愛されていたなんて
羨ましいと、思ってしまう自分がいた
「だがな、こんな一族だ、ずっと幸せでい続けることなどない」
「……と言いますと」
「私が一族のほかの連中から毛嫌いされたことを知っているよな？」
「ええ、そう、仰ったのはあなたですから」
すると彼は初めて私の前で苦しそうな顔をした
まさか
「………………ころされたのだ、私や、エシディシが研究に没頭し部屋にこもっていた時に…！」
「………………」
「私が駆けつけたとき、まだ息があってな」
「声をかけたのだが、一言いって死んでいった」
『カーズっ…………〜〜〜〜〜〜〜〜〜……』
「私はその時のショックで怒り狂い、国をひとつ転覆させた」
「！」
「そのせいで、あいつが言っていたことを忘れてしまったのだ」
「そいつが最期に持っていた花の名前も…もう覚えていない」
あたまが、痛くなった
何故だろう、それは私も体験している気がして仕方がない
カーズのあの懐かしさはなんだろう
でも、何となくわかった気がした
だが、カーズの次の言葉で、それが確信に変わる
「それがな、不思議なことに、顔も性格も、……名前すら、
お前と一緒なのだよ」
カーズは今にもその大きな瞳から涙を落としてしまそうだ
私は、思わず
カーズを抱き締めていた
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作者名：まー納豆 x他1人 | 作成日時：2019年6月27日 18時
