今宵、暁が焦がる頃に弐 (ページ34)

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拾漆:其レハ沈ム我ガ為の鎮魂歌ダト云ウページ34

宮舘「全く、康二をいじめちゃ駄目だろう？」
渡辺「だってあいつが軽々しく結婚とか言うから」
宮舘「まだ若いんだよ、あの子も」
境内のいつもの場所で、宮舘の作った稲荷を食べながら渡辺は宥め声の宮舘にむすぅ、と膨れた頬で返す。

宮舘「…あの夢は、最近は見なくなったのかい？」
自分が先程まで薄ら思っていた事を言い当てられ、驚いて噎せ返った。
宮舘「大丈夫かい？ほらお茶」
渡辺「…っ、お前の所為だろ。何で、」
宮舘「ふふ、私を誰だと思っているんだい？翔太の考えている事なんぞ、大体は想像がつくさ」
それで、どうなんだい？と聞かれ、「…見ないよ」とだけ返す。

宮舘「まあ、そう何回も見られちゃ困るがね」
渡辺「…涼太は見ないの」
宮舘「何をだい？」
渡辺「だから、その…自分が、…」
言い淀む渡辺に、宮舘は「あぁ…」とだけ返す。
宮舘「昔は何度も見たものだけどね。最近は」
渡辺「…いいな」
宮舘「だって今はここに翔太がいるじゃないか」
渡辺「…」
宮舘「翔太は、まだ不安なのかい？」
渡辺「…何でもお見通しじゃん」

ふふ、と袖で口を隠して笑う宮舘に、照れ隠しのようにむすり、と拗ねてやる。
…きっとあの夢を見たのは、渡辺自身が不安になっていたからなのだろう。
ここには誰も渡辺と宮舘の事を責める輩はいないとわかっていても、やはりどうしても不安に思ってしまう節はあるらしい。
俺の1番大事な人を「神の贄」だなんて言って手にかけたくせに、水害に見舞われれば「俺が罪を犯したから神がお怒りになっている」だの「海の神がきっと御赦しになっていない」だの言って。
初めから殺すつもりなら、いっそ涼太と一緒に殺してくれれば良かったのに。
…なんて。