今宵、暁が焦がる頃に弐 (ページ4)

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初めに言い出したのはどちらだっただろう、いいや、どちらが明言する事なく始まっていたのかもしれない。
家が隣同士の幼馴染みだった2人が、所謂「そういう」気持ちを抱いてしまったのは、お互いともそう気付いてしまったのは、何の悪戯だったのだろうか。
それならば、何故どちらも「同じ」にしてしまったんだよ。
――そう、彼が嘆いていたのは、とても鮮明に覚えていた。

別に変身願望がある訳でもなかった。
それでも、自分が彼と「違って」いたら、こんなひっそり、誰に隠すでもなく祝福されていたのだろう。
どれだけ髪を伸ばそうとしても、どれだけ「違う」服装を着ようとしても、最初が「同じ」じゃずっと同じ。
結局、自分たちがちゃんと素を出せるのは、あの海を綺麗に見晴らせる崖だけだった。

きっと打ち明ければ「悪霊に取り憑かれたのだ」と言われるに違いない。
どうして？そんな問いは全て多数派の圧力に潰される。
だってそれが普通なのだから。赤い糸は「違う」者同士じゃないと鋏で切られてしまう。
あぁ、そうして疑問を呈したところで何も解決しない。
影で隠れて、誰にも気付かれないように、全力で守って――息が詰まりそうだ。
誰も認めてくれやしない。雄蕊と雄蕊は「異端」なのだと。

だからあの時、渡辺が「同じ」同士じゃしてはいけない事をした時に、すぐに止めるべきだったのだ。
それでも止められなかったのは、ゼロ距離にあった彼の顔がとても愛おしくて仕方なくて。
10秒にも満たないそれが永遠の様に感じられる程、甘くて。
…それすらも、赦されないと知ったのはその日の夕刻の事だった。