今宵、暁が焦がる頃に弐 (ページ25)

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ゆさゆさ、と優しい刺激で目が覚める。
心配そうにこちらを覗くラウールの姿があった。
ラウール「魘されてたみたいで、ごめんね、起こしちゃった」
冷や汗のようなものが張り付いている。
深澤は「ごめんな」と呟くと、ゆる、と身体を起こした。

何だかいつもと違う。
深澤「…誰か、いた…？」
ラウール「え？」
部屋を見回すと、見慣れない明かりがあった。
良い匂いのするそれと、ゆらめく炎のそれを尋ねてみても、ラウールは首を傾げるだけだった。

誰かいた。
そして、こういう時に姿を現さない、というのなら、その人物は1人だろう。
深澤「…照、？」
ラウール「！」
ぴくん、とラウールの耳が動く。
自分から彼の名が出てくると思っていなかったのか、はたまたラウールは岩本がいた事を知っているのか、真意は不明だが。

深澤「…」
岩本がいたのだという仮説が、妙に腑に落ちる。
それは朧げな夢の間に「大切なバディ」の影を見たからか、それとも虚ろな記憶にぼんやりと映る岩本の姿が脳裏に残っているからか。
ラウール「…悪い夢、見てたの？」
深澤「……うん」
明瞭に思い出せるわけではない。それでもただ「悪い」夢であった事は確かだった。

ラウールは何も言わずに深澤の布団に潜りこんだ。
一緒に添い寝してあげる、とでも言いたげに、黙ってもぞもぞと布団の中で横になる。
もう眠気は襲ってこないが、深澤は少し体をずらしてラウールが寝る隙間を作ってやるとその頭を優しく撫でてやった。
何か優しい花の匂いに包まれながら、もう少し後に来るであろう夜明けを、ただひたすら待っていた。