今宵、暁が焦がる頃に弐 (ページ15)

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すっかり夜になってしまっていたらしい、目を開けても辺りは暗くて。
物音の方を見ると何かの影が動いていた。
9つの尾の影が見える。宮舘だ。
宮舘「…おや、起こしてしまったかね」
阿部「…」
宮舘「少しは落ち着いたかい？」
阿部「…何、しに来たの」
宮舘「晩御飯だよ。と言っても、今日はみんなの所に行くのが億劫だろう？だから、ここで食べたらどうかいって」

行灯に火が灯される。明るくなった部屋に、きゅ、と目を瞑る。
机の上には盆が2つ。宮舘は横たわる阿部の傍に近付いてしゃがみ込む。
宮舘「ほら、今日はお肉とじゃが芋の煮物だよ」
阿部「…舘さんもここで食べるの」
宮舘「あぁそうだよ。そうでもしないと、今の阿部は食べないだろう？」
そっと手を差し伸べられる。何だか初めて出会った時のようだ。

動こうとしない阿部を無理矢理抱き抱えて、阿部は翡翠のような色の盆の置かれた机の前に座らされる。
煮物の良い匂いが鼻孔を擽った。ぐぅ、という音が鳴る。明らかに自分のものだった。
宮舘「ほら、お腹は正直者じゃないか。冷めない内に、召し上がって」
おずおず、と箸を取り、煮物を口に入れる。
宮舘はそんな阿部をニコニコ見守りながら、同じように煮物を口に運ぶ。
2人切りで食事をするのは、自分が拾われて暫くの時以来だ。

宮舘「…昔の事でも、思い出しちゃったかい」
阿部は何も言わずに食事を口に運ぶ。宮舘は困った様に眉を下げながら阿部の方を見やる。
宮舘「本当に、阿部は困った子だねぇ。図星だと何も言わないんだ」
阿部「…」
自分の行動すらも言い当てられてしまったのが何だかいたたまれず、思わず箸を動かす手を止めた。