はち ページ9
「………トド松?」
硝子に透けた姿から察したのか、名を呼ばれた。
『…ごめん、すぐ行く!』
「待て、トド松」
静止の声を無視して、離れそうにない手を殴った。
遠慮がちに開いた扉の隙間から、
あつしくんの視線が僕の手首に注がれる。
途端に、普段は穏やかなその顔が、強ばった。
「…約束があるんです。
彼を貸して下さいませんか」
奇妙に下手に出たそれに、
チョロ松兄さんが笑った様に見える、
上辺だけの笑顔を浮かべた。
「……仲良くしてくれてありがとね。
でも、お引き取り願います」
あつしくんの手が握りしめられる。
それを見て、おそ松兄さんが首を傾げた。
ぱきん。
軽い、骨の音が鳴る。
「ほんとね、
ブラコンみたいで恥ずかしいんだけどさぁ…。
こいつ、毎晩の様に出掛けてるの。
疲れてるみたいでね、酷い顔してるから、
たまにはゆっk…」
いつもは途切れる事のない、
その言葉が止まった。
僕は、不意に寒気がしたから、
静かに目を瞑った。
あつしくんは、声を出して、笑った。
これ以上ないほどの満面の笑みで言う。
「……へぇ、ゆっくりさせようと?」
お前は馬鹿だと、言わんばかりに、笑った。
それから、
一瞬息を詰めたおそ松兄さんの腕を強引に離し、
少しも振り向く事なく、外に出た。
「…お借りしますね」
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けい(プロフ) - ピッピさん» ありがとうございます。随分と遅くなってしまい、申し訳ありません。 (2017年12月24日 12時) (レス) id: 3e781053f7 (このIDを非表示/違反報告)
ピッピ(プロフ) - な、なんてシリアスな…!面白いです、応援してます!! (2017年11月13日 1時) (レス) id: 95f6ab4992 (このIDを非表示/違反報告)
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