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人間が玖匹。 ページ18

無一郎Side.








「僕も、死ぬのかな」



明日には屋敷へ突入、という状態でぽつり、と本音が漏れる。




ここに来るのも今日が最後かもしれない。そう思うと、勝手に背筋が震えた。







「…私はさ、殺すまで死なない」




墨のいつの間にか一人称が『僕』から『私』へ、本来の姿へ戻っていた。




それは元々人前だけ『僕』なのか、何かの心境の変化があったのかどうかわからない。




どちらにしろ嬉しかった。




「ねぇ、無一郎」


これだってそうだ。いつの間にか苗字から名前を呼ぶようになった。


無意識のうちに人は変化していくものだな、と思う。






墨が《時透くん》から《無一郎》になったように。

僕が《紅河さん》から《墨》になったように。







「また、逢えるかな」


刹那、強い東風が吹いた。


墨の足が縺れ、倒れそうになる。



その衝撃を胸で受け止めながら、真っ直ぐに墨の目を見た。


「逢いに行くよ、墨。」

チャコールグレーの薄く、氷が張ってあるような瞳は吸い込まれるように碧かった。

見開かれるその水晶を、その瞳の奥を懐かしいとさえ思えてしまう。


「たとえ初めは逢えなくても、俺が逢いに行く。だから墨は俺のこと、忘れないでよ?」




「う、ん…っ!」









瞬間。




墨の顔は今までにないくらい紅く染まった。


それももう、ボボボっと効果音が付きそうなほど。



「え、何?」


「何じゃないよ…」


そう言ってその場にへたり込む。





上目遣いでこちらを見た時、ドクッ、と心臓が跳ねた気がした。




「さ、鍛錬しなくちゃ!無一郎もほら、行くよ!」



素手で木を切り倒していく墨。



相変わらず顔は赤くて、笑ってしまった。




「何笑ってんの」








墨Side.


母は憎い。


弟を殺した母は憎い。


母の愛人も憎い。愛鬼といったほうが正しいと思うが、本当に悪くて仕方がない。



でも、あの日母が愛人をつくるきっかけになった、家に来た鬼が一番憎いんだ。




「行ってきます。」



ここに戻ってきたい。







母が鬼を知らなければよかった。



母が鬼を知ったから、一連の流れが起きたんだ。




うちに来た鬼が悪い。鬼という存在を知らしめた、あの鬼が悪い。





矛盾してても良いから、まずは黒死牟を殺りたい。

鏡の呼吸 壱の型→←人間が捌匹。



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作者名:零堂June | 作成日時:2020年9月2日 12時

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