三百八十八話 ページ27
・
「…」
宿敵の呆気の無い最期。
視界一杯に広がる空に、チラチラと舞う塵。
無惨の死にまずAが最初に感じたのは、喜びでも痛みでもなかった。
ただどうしようもない、今すぐに胸を押さえて泣き叫びたくなるような、寂しさを感じた。
(…空は、綺麗な空色なんだろうな)
継承の効力が無くなって、理性と痛覚こそ戻ってきたが、色彩は今も無い。
きっともう戻ってこないだろう。
別にそれはどうって事は無いが、それ以外の失ったものを思えば勝手に涙が溢れて来た。
やっぱり、そうなのか。
悲鳴嶼さんも、甘露寺さんも伊黒さんも、そしてつむぐも、いってしまうのか。
無惨は死しても、尊い命を道連れにするのか。
勝ったという実感よりも、先にこの胸に去来したのは"寂しさ"。
まとわりつくそれに、Aは何もできずにただ泣いた。
あぁ。寂しいなぁ。
悲鳴嶼さんも、甘露寺さんも、伊黒さんも、つむぐも、いってしまった。
あまりにも大きな代償に、胸にぽっかりと穴が空いたようだ。
その風穴を通り過ぎていくような風が、今まで感じた何よりも冷たく、寒いのだ。
「――、―――…？」
隠がAの手を握って、それを己の額に当てて咽び泣いている。
彼女を治療する二人の隠と隊士も、ボロボロと涙を流しながら彼女に包帯やらを巻いていく。
(…俺が、泣かせたのかな)
Aは心の内で、自嘲的な笑みを零した。
身体が自分じゃないものみたいに全く動かない。うまく声も出ない。
今すぐに仲間達の元へ向かいたいが、この状況じゃそれもできない。
そして生憎今のAは、往生際の悪いただの根性無しだった。
まぁつまり、簡単に言えば「生きていたい」と思った訳で。
「ぅ…ッぅ…」
ちゃんと寿命まで生きるから。
自分の都合で終わらせようなんて事、もうしないから。
まだそっちには行けない。アイツに言わなくちゃならない事がある。
だから、許してほしい。
そしてこの我儘が聞いてもらえるなら、せめて一言、「ただいま」と、師匠に言いたかった。
「――…」
「ッ――！」
「――…―」
「――！」
隠達が泣きながら何かを言い合っている。
その光景にAは、これ以上彼らを泣かせまいと、唇を噛み締めた。
・
それにしても、寒いなぁ。
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名梨(プロフ) - あばんぎゃるどもふねこさん» 温かい言葉をありがとうございます…！ちなみに私の名前は名無しが元になってるので大丈夫です。ありがとうございます…！ (2020年5月8日 9時) (
レス) id: ecab760345 (このIDを非表示/違反報告)
あばんぎゃるどもふねこ - 名梨さん» いえいえ、私自身の意見なので。何をどうするかは名梨さんが決めることです。個人的な意見に耳を傾けて下さり有難うございます。ついでに言うと名梨さんの漢字間違えてました！なにやってんだって感じですね。申し訳ありませんでした！ (2020年5月5日 10時) (レス) id: 9c2226ad75 (このIDを非表示/違反報告)
名梨(プロフ) - あばんぎゃるどもふねこさん» せめて朔と日は良い感じで終わらせたいので、どうぞ温かい目で見てやってください。 (2020年5月3日 20時) (レス) id: ecab760345 (このIDを非表示/違反報告)
名梨(プロフ) - あばんぎゃるどもふねこさん» コメントありがとうございます。申し訳ありません。私自身としては残しておきたかったんですが、色々あった末に消す事になりました。作品を好いてくださりありがとうございます。そして申し訳ありませんでした。 (2020年5月3日 20時) (レス) id: ecab760345 (このIDを非表示/違反報告)
あばんぎゃるどもふねこ - いやっふうう！！やあっと終わりましたね！無限城編！…で、重要なのはこの後ワニ先生がどういう流れにするのか、ですよね。まあ、予想だと続編は出ないと思いますが。新しくお話を作成されるのは喜ばしい事です。私ら一同楽しみにしておきます。 (2020年5月1日 19時) (レス) id: 9c2226ad75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：名梨 | 作成日時：2020年3月8日 18時
