八十二話 ページ7
数日後。
いつも通りの恐ろしいほどの任務を片付けたAは、げっそりした表情で蝶屋敷に来ていた。
今日から潜入調査である。宇随からの指示で蝶屋敷に集合する予定だ。
(結局あれから炭治郎に会う機会が無かった…)
仕事は多いし、定期検診に向かえば炭治郎達丁度よく任務に行っていていない。
そんな日々が続き、とうとう自分の口から報告する事なく当日を迎えてしまった。
(ごめんよ、炭治郎)
しょんぼりしながら屋敷の角を曲がろうとした。
しかし、騒がしい声を耳にして足を止める。
「放してください!!私っ……この子は…っ」
「――!」
「うるせぇな黙っとけ」
家○婦は見た!ならぬ、寧塑寺は見た!
かつての師範が少女を担いで攫おうとしている所を。
「やめてくださぁい!!」
「はなしてくださいー!!」
きよとすみ、そしてカナヲが玄関で立ち尽くしており、アオイとなほが音柱に担がれていた。
「…」
ちょっ…と待て待て待て。状況が飲み込めない。
Aは静かに身を隠す。
若い女性が苦手な彼女はすぐに行動を起こす事ができなかった。
(…よし、とりあえず宇髄さんが敷地から出たら現行犯で蹴り入れよう)
少女達に申し訳ないと思いながらAは成り行きを見守った。
まずカナヲを筆頭にきよとすみが音柱に飛び掛かる。
「とっ、突撃――――!!」
「突撃―――っ!!!」
カナヲは担がれたアオイの手を掴み、きよとすみは音柱の身体に飛びつく。
「ちょっ、テメェら!!いい加減にしやがれ!!」
アンタがいい加減にしろよ。いくらモテるからって調子乗ってんじゃねぇぞこの野郎。
Aの怒りの矛先がちょっと違う方向に向いた、その時。
「女の子に何をしているんだ!!手を放せ!!」
救世主炭治郎が登場した。
案外この時一番安堵したのはAかもしれない。
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月18日 18時