百八話 ページ36
音柱はあからさまに顔を歪める。
「ああ?何言ってやがる。本当に脳味噌爆発してんのか」
「何ですって!!」
「何で一介の鬼殺隊員を欲しがるんだよ」
「アタシが知る訳ないでしょ!!」
聞こえてくるのは音柱と堕姫の声だけ。
話題である当の本人は
「…」
何も言わず、残酷なまでの虚無を堕姫に向けていた。
「その女が必要だから連れて来いって言われただけよ!」
「……A」
「宇髄さん」
カチャリ、と刀を構える音がした。
萌葱の日輪刀を向けられた堕姫は悔し気に唇を噛んでいる。
「コイツは駄目っスね、頚を斬っても死なないようなのでさっさと殺しましょう。身体を細切れにすればいいでしょうか」
「っ…!」
「オイ!」
慈悲の欠片も無い冷徹な瞳は、初めて彼女と会った時と同じだった。
まずい、と音柱は直感する。Aの両肩を掴んで彼は呼び掛けた。
「Aお前また」
「ふざけんじゃないわよぉ!!」
右耳から左耳へ突き抜ける金切り声が響き、Aはギョッとした顔で我に返る。
「おっ、え?」
「アタシは強いんだから!!アンタなんか瞬き一つの間に殺してやるんだからっ!!」
「…いやさっきコイツの事連れて行くとか言ってなかったか?」
「うるさいわよぉ!!」
もはや反論もままならない。
Aはついさっきまで抱いていた殺意を疑いたくなった。
「死ねっ!!死ねっ!!皆死ねっ!!」
拳を畳に叩きつけながら彼女は叫ぶ。
「わぁあああっ!!わぁぁああ!!」
「……宇髄さん…」
「安心しろ。俺もお前と同じ気持ちだ」
とうとう堕姫は畳の上で暴れ回りだした。
嗚咽を漏らしながら号泣し、玩具を買ってもらいたい幼児の如く駄々をこねている。
ガキかよ、とかは思っても口に出さない。
「頚斬られたぁ!!頚斬られちゃったああ!!お兄ちゃああん!!」
「――うぅううん…」
うずくまる堕姫の背中からもう一体が出て来たのは唐突だった。
即座に反応したAが刀を振るうも、それは堕姫もろとも姿を消す。
「チッ」
頚を斬られても死ななかった。それどころかもう一体背中から出て来た。彼女はそれを「お兄ちゃん」と呼んだ。
情報過多すぎて嫌になるね。
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月18日 18時