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百六話 ページ34

(鬼の気配の傍に炭治郎の気配がする…)



屋根を素早く駆けながらAは前方を睨む。日輪刀の鞘を支える手に汗が滲んでいた。


音柱達が後を追って来ているかどうかはどうでもいい、ただ炭治郎の安否だけが気になって仕方が無かった。



(無事でいてくれよ…!)



そう祈りながら屋根から飛び上がる。全身を旋回させながらときと屋の方に目を向ける。



「…っ!!」



うずくまる小さな市松模様が視界に入り、彼女の顔から血の気が引いていった。


血相を変えて彼の名を叫ぶ。



「炭治郎!!!」



急いで彼の元へ降り身体を起こさせる。


切り裂かれたのだろうか、肩口から血が溢れ出ていた。



「だッ、大丈夫か!?何があった!?」


「っ…う、」



朧気な瞳がAの苦しそうな表情を捉える。



「お前…あの女に襲われたのか!?何か目の所血で汚れてるし…」



鬼殺隊員となってから音柱以外の隊士とは全く関わってこなかったAは、ここまで焦る自分に驚いてさえいた。


炭治郎の赫い瞳がふるふると彷徨う。



「禰…豆子、は…?」


「禰豆子?来る時は見なかっ」



Aの言葉に間髪入れずに破壊音が響いた。



「!?」



少し離れた所に立つ建物が、横なぎに破壊されていく。


咄嗟に確信した。人間の仕業ではない。


堕姫か禰豆子がそこにいる。両方かもしれない。



「――炭治郎、お前はそこでじっとしてろ。傷が酷」


「っ禰豆子!!」


「おい!」



息も絶え絶えと言った様子だった炭治郎が勢いよく起き上がる。


そのまま駆け出そうとした彼の手をAは掴んだ。



「離してくれ…!!」


「死に急ぐのはお前もだろうが!今死んでもおかしくないんだぞ!」


「たった一人の家族なんだ!!」



その剣幕にAの手が緩む。


炭治郎は気遣うように彼女を一瞥してから破壊された建物の方に向かって行った。



「…」



竈門炭治郎。


家族を皆殺しにされ、ただ一人残った妹は人を食う鬼へと変えられた。


その身体に抱える物は計り知れないほど大きい。自分はそれを小さく見積もり過ぎていたのだ。



「誰か来てくれぇ!!」


「私の子供を助けて!!」



下方から追い詰められた人々の声が聞こえる。


Aはほぼ無意識に、炭治郎の方ではなくその声の方へ足を向けた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 竈門炭治郎 , 原作沿い   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月18日 18時

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