百二話 ページ30
伊之助はどうやってんだ猪頭の目を見開いてみせる。
「おまっ、四十路じゃねぇか!」
「俺はまだ華の十代だわ馬鹿」
けほ、と軽く咽る彼女は伊之助の元へ駆け寄る。
その頬や肩には薄い掠り傷があった。
「オイさっきのヤツお前がやったのか!?」
「ん?まぁな」
親分はカッコいいものが大好きなのだ。
音柱を祭りの神と最初に信じたのも彼だった。と言っても彼しか信じてないが。
「あんの派手神が…威力あり過ぎだっつーの…」
あの爆発はAが常に携帯している音柱特製爆薬である。「いつか絶対必要になる」と半ば強引に押し付けられたものだ。
彼の言う通りになるのも癪だったが、なにより頼るような事はしたくなかった。
まぁ今回は例外って事で。
「悪いな親分。ちょっと捕まってたから行けなかった」
「フン!その傷に免じて許してやろう!俺は親分だからな!!」
「助かる」
Aはそう返してから手に持っていた日輪刀を腰に差す。そして帯を睨み据えた。
「アタシの拘束から逃れた人間は初めてだ」
「……じゃ、人間に切り刻まれるのも初めてだな」
「――!」
弾かれたように帯は背後を見やった。
捕えていたはずの女達が地面に倒れ、己の身体である帯が細切れになっている。
爆発と共に隠し持っていた短刀で周囲の帯を切り刻んだのだ。帯は今の今までそれに気付けなかった。
「調子に乗るなよ、小娘が」
弾丸のごとく帯がAと伊之助めがけて向かって来る。
「オラオラやるぜぇ!!いくぞ三十路!!」
「俺は寧塑寺だいい加減覚えろ!!」
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寧塑寺さんの日輪刀を持って来たのは、御察しの通り宇髄さんの鼠です。
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月18日 18時