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九十三話 ページ20

「まったく……アンタの表情筋は一体どうなってるのよ」


「すみませ」


「はい口開かない!」



んな滅茶苦茶な。


善逸を元に戻してから数個刻後、外面は遊女見習いであるAは一人の遊女に化粧をしてもらっていた。


口に紅を乗せる筆の感触がまた何とも気持ち悪い。



「―――はいおしまい」


「ありがとうございます」


「いいのいいの。アンタの世話係は私なんだし」



とそっぽを向いて口にするも口角は上がっている。楽しいのだ、年下の世話をするのが。


妹か弟でもいたのだろうか、Aは思わず頬を緩めてしまう。



「…! アンタ…」



気付かれた途端に仏頂面になる辺り流石Aだ。



「今笑って…」


「そうですか?幻覚でしょう疲れてるんですね私は邪魔のようなので失礼します」



Aは若い女性に笑顔を見せた事が無い。単純に恥ずかしいからである。


早々に会話をぶった切り音も無く立ち上がった。



「あっちょっと待って!」



これがAの不意の笑顔による制止であったらば彼女は出て行っていた。


その言葉に立ち止まったのは身体が勝手に反応したからだ。


鬼殺隊員故に、何でもない事も本能的に引っかかるようになってしまう事が多々あるのだ。



「何ですか?」


「アンタの幼馴染の子にも伝えといて欲しいんだけど…」



そう前置きして女はAの耳に口を寄せる。


そして密やかにこう言った。



「ここの一番人気の蕨姫花魁って方がいるんだけど」


「蕨姫花魁?」


「この京極屋で一番綺麗な方よ。まぁアンタが来てからはその立場が危ういんじゃないかって噂が立ってるけど」



俺そんな事になってるのか?


Aは喜びなど感じない。代わりに面倒臭さを心一杯に溜めた。



「で、その人が何なんです?」


「いい?これだけは絶対に守って」



女の瞳に青白い感情が入り混じる。


あぁ、これはよく見て来た感情と同じ。



「絶対に、蕨姫の機嫌を損ねるような事をしちゃ駄目よ」



恐怖だ。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 竈門炭治郎 , 原作沿い   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月18日 18時

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