九十三話 ページ19
Aは笑わず、善逸は三味線に磨きをかけ続け、数日経った。
明後日はもう炭治郎達との定期連絡だ。
三味線弾いてた、とか、変な動きをする遊女達を眺めてた、とでも言ったらそれこそ音柱に息の根を止められる。
とにかくこの遊びに来ているだけのような現状を打開しなければならない。
「―――おいタンポポ君」
と言っても彼女自身は最初から笑顔を見せる気などない。
とりあえず善逸を正気に戻す事にした。
「アイツ…絶対に許さねぇ…」
「無視すんじゃねぇよ。早く雛鶴さん探すぞ。三味線なんか極めてどうすんだよ」
「俺は…いやアタイ絶対吉原一の花魁になる!」
室内にA以外いない事がせめてもの救いだろうか。
ひとまずAはドン引きした。
「…は?おま、何?」
「アタイは…アタイはあいつをぉ…!!」
「そのアタイってやつやめろ、寒気がする」
善逸の瞳には音柱への復讐が燃えている。当初の目的を忘れているようだ。
「Aも手伝ってよ!!」
「おうまずお前は正気を取り戻せ」
Aの言葉にポカンとする善逸。
瞬間、彼の首根っこが引っ掴まれた。
強く。
「いっ、いだだだだだッ!!」
「お前の名前は?」
尋問の始まりだよ。
「…あッ、我妻善逸ぅ…!」
「はい大正解。次だ、お前の所属組織は?」
「きょうご……鬼殺、隊ィ…」
「鬼殺隊の我妻善逸君。お前は今何のためにここにいる?」
「……吉原一の」
「ん?」
「痛い痛い痛い!!宇髄さんの奥さん探すため!!」
遊女達の前では決して見せないような笑顔でAは無事善逸の正気を取り戻した。
パッと手を離すと彼は痛そうに首の後ろに手を添える。
「いっつぅ……お前さぁ、どうすりゃいいか分からなくなると暴力に走るのやめろよぉ…」
「…ご、ごめん…善処するわ」
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月18日 18時