九十二話 ページ17
「あの美女が嫁なの!?あんまりだよ!!三人もいるのに皆あんな美女なんすか!!」
「嫁じゃねぇ!!こういう番付に名前が載るから分かるんだよ!!」
番付を掴んだ音柱の拳が善逸に直撃する。
地面に倒れ伏した彼にAはしゃがんで声を掛けた。
「でも皆滅茶苦茶綺麗だぞ」
慰めじゃなく完全にとどめを刺しに来ているが。
「もしお前があの人達に会ったら鼻血が止まらなくなって出血多量で死ぬだろうな」
「おいふざけた事言ってんじゃねぇ」
「はぁ……そうでもしないとやってられないんスよ分かります?この屈辱感」
Aが己の着物の裾を持ち上げて不快感を露わにした。
それに対して鼻で笑われたのには流石に殺意が湧いた。
「歩くの遅ッ。山の中にいたらすぐ殺されるぞ」
「…お前もその人が熊かなんかだったら食われてるだろうな」
伊之助を不審なほどに至近距離で見つめる女がいる。
「――ちょいと旦那、この子うちで引き取らせて貰うよ。いいかい?」
話を聞けば、彼女は荻本屋の女将だそうで。
音柱の嫁の一人、「まきを」がいるはずの店だ。
「荻本屋さん!そりゃありがたい!」
いまいち状況を理解していない伊之助は頭に疑問符を浮かべながら連れて行かれた。
残るはA、そして善逸。
まずい。このままでは失業者になってしまう。
「お前なぁ、顔はいいんだからその目やめろ」
俺に近付くんじゃねぇオーラを終始出し続けるAは当然売れ残る。
善逸は……まぁ察してくれ。
元の顔はかなり整っているが化粧した途端にアレになってしまった。
「とにかく笑っとけ。んな不機嫌な顔じゃ潜入調査もクソもねぇだろうが」
「…」
「雛鶴のためだ」
Aが少し拳を震わせて、やがてゆっくりと顔を上げる。
「おぉ…」
「やるじゃねぇか」
貼り付けられた究極の営業スマイル。
それを見た音柱と善逸、そして
「ちょ、ちょっと…!」
京極屋の女将は感嘆した。
再び死んでいくAの頬をつまんで上げた音柱がにこやかに応える。
「はい、何でしょうか?」
「その子をうちに…京極屋に引き取らせてちょうだい!」
「それはそれは!是非よろしくお願いします!」
Aは頬をつまみ上げられたまま音柱を殴らないように耐えるので精一杯だった。
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月18日 18時