四十五話 ページ5
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「政府公認の組織じゃないからな、俺達鬼殺隊」
「だから堂々と刀持って出歩けないんだよ、分かるか?」
乗降場の物陰にて、善逸の猛ダッシュのおかげで何とか逃げおおせた彼らは列車が来るまで刀をどうするか話し合っていた。
「一生懸命頑張ってるのに…」
「頑張って褒めてもらえる事なんかそう多くねぇよ。とりあえず刀は背中に隠せ」
「うぃえっ!?」
Aはとりあえず善逸の日輪刀を彼の背中にぶっ刺した。
羽織があるからいい感じに隠れるな。
「♪」
「…ふざけてんのか?」
しかし伊之助は羽織すらない上裸である。
彼自身は楽しそうだが、それでも背中に二本棒がぶっ刺さってるのは逆に目立つ。
「丸見えだよ服着ろ馬鹿」
ごもっともな意見で。
一先ず彼に手頃な布を羽織らせ、丁度到着した列車に乗り込む。
「うおおお!!腹の中だ!!主の腹の中だうおおお!!戦いの始ま」
「伊之助」
静かな声がした。
Aは、笑っていた。
彼女の細い腕がいつかの締め技を示唆しているのを除けばとても可愛らしい。
「…」
「…凄いなお前…あの伊之助を一瞬で黙らせた…」
「余程痛かったんだろうな…」
「あれは自業自得だ。いいから探すぞ、煉獄って人を探すんだろ?」
辺りを見回すAだが、炎柱らしき人影は見当たらない。
(…と言うか、なんで全員寝てるんだ?)
この車両にはそこそこの人数の乗客がいるのだが、不思議な事に全員眠り込んでいた。
伊之助の大声にも全く起きる素振りを見せなかった乗客達を観察しながら、隣の車両の扉を開ける。
「うまい!!」
聞こえてきた第一声がそれである。
「うまい!」
「!?」
「うまい!!うまいうまい!」
炎のような長髪を持つその人が、ただ「うまい」と声高らかに言いながら弁当を食らっている。
見開き気味の双眸はどこか一点を見つめていて、全くぶれない。
「……あの人が炎柱か」
「うまい!!」
「うん…」
「うまい!」
「ただの食いしん坊じゃなくて?」
「うまい!!」
「…ああ」
善逸が驚くのも分からなくもない。
このまま炎柱を観察している訳にもいかないので、Aが遠慮がちに話しかける。
「あの…」
「うまい!!」
「あの、煉獄さん」
「うまい!」
「…う、うまい!!」
「! うまい!」
同じようにそう言うとやっと反応してくれた。
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月12日 18時