四十四話 ページ4
「Aは駅の構造とかよく知ってるのか?」
「まぁ、それなりに?何年かこの辺に住んでたから」
「へぇ!!じゃあ俺と同じ都会育ちって事かな!?」
「何でそんなに嬉しそうなんだタンポポ」
なんて会話をしながら、四人は乗降場を歩いていた。
そこは他とは変わらず人混みで、Aは気分が悪くなる。
まだ胃が痛くなってない事が唯一の救い…。
「オイ!!」
「? どうしたんだ伊之助」
「オイ……何だあの生き物はーっ!!」
前言撤回。
どうやらこいつらといるとAの胃は痛くなるしかないようだ。
蒸気機関車を指差して叫ぶ伊之助に、Aは疲労と苛立ちのあまり目が死んできた。
「こいつはあれだぜ、この土地の主…この土地を統べる物……この長さ、威圧感…間違いねぇ…!今は眠ってるようだが油断するな!!まず俺が一番に攻め込む!!」
Aはうんざりした。
いくら山育ちとはいえそれくらいの知識は持っていてほしいものだ。まったく。
「伊之助、それはこの土地の守り神かもしれないだろう。それから急に攻撃するのもよくない」
先生、馬鹿がもう一人いました。
「いやこの土地の主でもねぇし守り神でもねぇよ。汽車だよ。汽車分かる?人を運ぶ乗り物」
「シッ!!落ち着け」
「まずお前が落ち着け親分。とりあえず離れろ、下手したら食われる」
寧塑寺A、絶賛疲労蓄積中。
もう何が正しいのか分からない。
「何っ!!コイツ人を食うのか!?」
「ああ、猪の被り物被った奴だけ食う」
「マジかよ!!」
嘘だよ。
善逸が凄い顔でこちらを見つめてくる。
やめろ、こちとら言いたくて言ってるんじゃないんだ。
「お前だって守り神に食われて死ぬとか地味な死に方したくないだろ。だからさっさと離れ」
「なら敵は倒すまでだ!!!」
「は?え、ちょっ」
「猪突猛進!!」
伊之助はこの土地の主に頭突いた。
列車が少し傾く。
(何してくれとんじゃいこの猪!!!)
続いて二発目に移ろうとする伊之助をAはなんとかひっぺがした。
「おいおまっ…やめろよ恥ずかしい!」
「ふざっけんなよ馬鹿なのかお前!!馬鹿なのか!?馬鹿だったわ知ってた!!」
「何だと!?」
「と、とにかく早く」
「何してる貴様ら!!」
騒ぎを聞きつけた駅員が駆けてくる。
あぁ、終わった。
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月12日 18時