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六十四話 ページ24

炎柱に斬られた腕がもうかすり傷のように回復している。


流石は上弦といった所か。


纏う気配すらも禍々しく重い。



「――いい刀だ」


「…何故手負いの者から狙うのか理解できない」


「話の邪魔になるかと思った。俺とお前の」



恍惚とした笑みを浮かべ、彼は両手を広げる。



「君と俺が何の話をする?初対面だが俺は既に君の事が嫌いだ」


「そうか、俺も弱い人間が大嫌いだ。弱者を見ると虫唾が走る。例えば、そいつのような」



上弦の参が指差す先には、鋭い眼光で彼を睨みつけるAがいた。



(弱い奴を見るだけで虫唾が走るんなら見んじゃねぇよ)



「…何故寧塑寺少年が弱い?」


「そいつの闘気が薄すぎるからだ。だから弱い」


「…」



それは、弱いとは違う。


ただ単に闘う気が無いだけで、彼女自身は更に極めれば炎柱を超えるほどの可能性を秘めている。


彼女は戦いたくないのだ。


自分だって傷つきたくないし、他の人にも傷ついてほしくないから。


もう誰も、傷つけたくないから。


だから更なる高みを目指そうとしなかった。


そして炎柱もそれに気付いていた。



「寧塑寺少年は弱くない。少なくとも俺や君よりも。俺と君とでは物事の価値基準が違うようだ」



Aが愕然と炎柱を見やる。


自分に対しての評価を直接口に出してくれたのは炎柱が初めてだった。


それが自分を認めてくれる言葉であるなら尚更、嬉しくて哀しかった。



「そうか、では素晴らしい提案をしよう」


「お前も鬼にならないか?」


「!?」


「ならない」



炎柱が即答してくれたのがせめてもの救いだろう。


そうでなければ今、Aは上弦の参に飛び掛かっていた所だ。



「その闘気、練り上げられている。"至高の領域"に近い」


「俺は炎柱・煉獄杏寿郎だ」


「俺は猗窩座。杏寿郎、何故お前が至高の領域に踏み入れないのか教えてやろう」




曰く、人間であるからだと。


年を取り、老いて死ぬからだと猗窩座は言った。



何を根拠に。昔は同じ人間であったお前が偉そうな口を利くな。


Aはそう叫び出したくてたまらなかった。



ふと、炎柱が彼女の前に立つ。



「老いる事も死ぬ事も、人間と言う儚い生き物の美しさだ」


「この少年達は弱くない、侮辱するな。何度でも言おう、俺と君とでは価値基準が違う。俺は如何なる理由があろうと鬼にならない」



「……そうか」

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設定タグ:鬼滅の刃 , 竈門炭治郎 , 原作沿い   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月12日 18時

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