六十五話 ページ25
猗窩座の立つ地面から鈍い光が滲んだ。
どことなく雪の結晶に似ているそれの中心で、彼は戦闘態勢に入る。
「鬼にならないなら殺す」
「待っ…」
地面を抉るほどの勢いで猗窩座が炎柱に突進していく。
対する炎柱も猗窩座に向かっていった。
「このっ…」
Aは彼らの戦闘を必死に目で追う。
追えない速さではないが、どの瞬間に加戦すればいいのか見極められなかった。
何度も大地を揺るがす轟音が鳴り響く。
それほどまでの強者同士の戦いなのだ。
「この素晴らしい剣技も!失われていくのだ杏寿郎!!悲しくは無いのか!!」
「誰もがそうだ!!人間なら!!当然の事だ!!」
彼らの戦況を目で追えず混乱する炭治郎をよそに、Aはふらりと立ち上がる。
右足に少しの力を入れるだけでミシミシと骨が軋む。
「ッ……れんご」
「動くな!!下手をすれば後に響く!!待機命令!!」
「!」
この時初めて、Aは柱である事をを隠していた事を後悔した。
強く唇を噛み締める。
口の中で鉄の味が広がった。
72人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月12日 18時