Episode７６ ページ36
「あ、」
「っっ！ すみません失礼します僕あちらに用事が」
「今教室から出てきたじゃないっすか」
変な事言わないでください、と彼女が僕の手を掴む。何時もと逆だ。掴まれた手首が熱い。離して欲しい。嘘、まだ離さないで。
「あの、流石にあからさま過ぎるって言うか……。理由もなく避けられるとムカつくんですけど……」
なんか気に触る事しました？ と首を傾げる彼女。長い髪が揺れる。下から見上げられる事に慣れない。彼女の顔を見るのが随分久々な気がする。
恐らく真っ赤な顔を見られた。やめて欲しい。こっちを見るな。うそ、やっぱり逸らさないで。
ぐるぐる渦巻く思考。グローブ越しの手は熱くないだろうか。手だけじゃない、汗は大丈夫でしょうか。
僕を真っ直ぐ見上げていた彼女は、僕の顔を見て、口をパクパクと開閉させる。まるで魚のよう。
「……あの、あんまり、見ないで下さい……」
僕の口から漸く絞り出した言葉。
恥ずかしいです、と口元を隠す手。
は？ なんですかこれ。誰ですか。
こんな僕、僕は知らない。
「……は？ え、あ、すんません……」
彼女は、僕を見上げたまま、するりと手を離す。いつもなら僕が掴む番。それも出来ぬまま彼女の姿を見送った。
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葵(プロフ) - よるさん» コメントありがとうございます！ ノリと勢いだけで書いてるので、そう言って貰えると嬉しいです^^ (2020年8月15日 16時) (
レス) id: f205b8954e (このIDを非表示/違反報告)
よる - とんとん拍子に進んでいくノリが好きですw (2020年8月12日 0時) (レス) id: 3f2ada3c1c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葵
| 作者ホームページ：https://twpf.jp/uranai_aoi
作成日時：2020年7月5日 21時
