守備範囲外でも愛してる【文スト】

・共喰い ページ36

ウミソラさんリクエストです！大変遅くなりました...“〇|￣|＿

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目が覚めた。敵にここまでやられるとは、不甲斐ないものだ。だが自責よりも先に森にはすべき事があった。蹴りをつけなければならない。多くの部下が死ぬ前に。そう思い起き上がると傍らに苦しげに眠る彼女が目に入る。どうやらずっと看病をしていてくれたらしい。

「...A」

そっと頭を撫でる。愛おしい私の妻。所帯を持つ気など無かったのに惹かれて、絆されて、ものにしたくなった。こんな風に不安がらせる事も苦しませる事も、そして置いていく事もあるかもしれないと分かっていて彼女は私に着いてきてくれた。

「鴎外さん...？」

つい愛ですぎたらしく彼女が起きる。寝ぼけ眼ではあるが、状況は理解しているらしい。一瞬不安げに顔を歪めて問う。

「何処か...行くん、ですか？」

「あぁ、少し出てくる。大丈夫、すぐに戻るよ」

「っ...分かりました。じゃあ、支度しなきゃですね」

少しふらつく私の支度をいつも通りに手伝う彼女の顔は笑っている。酷く辛そうな笑顔。きっと、他の男ならばこんな顔をさせないのだろうが、生憎もう手離したくはなくなってしまった。

「今日は鴎外さんの好きなもの用意しますから早く帰ってきてくださいね？」

「あぁ、勿論」

彼女と軽く唇を合わせる。泣き笑いの顔さえ愛おしい。そっと頬を包んでやると、彼女は小さくすりよってくる。

「...行ってらっしゃい」

「行ってきます」

彼女の薬指にキスを落とす。背を向けて歩き出す。私は死ぬ訳にはいかない。街の為に、組織の為に、そして彼女の為に。
そうして森は旧き思い出の地へ脚を進めた。

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