守備範囲外でも愛してる【文スト】

我儘 ページ17

「そういえばお主ら、蜜月は行ったのかえ？」

「行ってないですよ、だって鴎外さん忙しいですし。ね、エリスちゃん。」

「そうね。でもなんでAはもっと我儘言わないのかしら。」

定例の女子会。無事に鴎外さんの奥さんになったけど、婚約者の時とあまり変わること無く生活している。他の人に夫人と呼ばれる以外は。

「そうですよ、首領の事ですからAさんが言えばお休みを取られるのでは？」

「只でさえ私が増えて皆さん大変なのに、これ以上お仕事増やしちゃったら申し訳なくて。」

何故かその場にいる全員が溜息なり、呆れ顔なりをする。ええ、何かおかしいこと言った？というか此処にいる皆さんこそ鴎外さんが出掛けたら大変な方達では？

「前から思っていたのですが、Aさんは遠慮し過ぎなのではないでしょうか？」

「えぇ？結婚してもらっただけでも十分なのに、蜜月なんて行き過ぎた我儘ですよ。」

「そういう所ではないかのぉ？」

首を傾げて、周りを見れば皆さん同意見のようで。これでも十分我儘言ってると思うんだけどなぁ。蜜月には行きたいけど、彼には負担をかけたくないし一緒に居られるだけでも十分なのに...。

「この際だから言ってみたら？行きたいんでしょ？」

「うっ、まあ...行きたいけど。」

「わっちらの事はあまり気にするでない。」

「言うだけ言ってみたらいいですよ！」

「そうです。」

その日は皆に色々と言われたので、遂に言うだけ言ってみることにした。お風呂から上がって ぽたぽたと水を落とす鴎外さんの髪を拭きながら話しかける。本当に綺麗な黒髪。

「鴎外さん。」

「なんだい？」

「我儘、言っていいですか？」

「珍しいね、君がそんなこと言うなんて。」

彼がくるりと嬉しそうにこっちを見て寝台に上がってくる。粗方拭き終わった所だったのでタオルを置いて彼の前に座って話を切り出す。

「その、よかったら蜜月に行きたいなぁって思うんでs..！？」

全部言い切る前に押し倒され、キスされる。間近にある鴎外さんの顔が本当に嬉しそうに笑っている。

「Aから言ってくれるなんてねぇ。嬉しいな。実はね、もう準備してあるんだよ？」

「え？」

「2人きりでゆっくりできるように手配したから、楽しみにしていてね。」

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