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Aは、一定の感覚でクラスメイトと
絡んでいた。
チャイナや志村姉も距離が近かったといえば
そうだが、特別深入りしているようにも
見えなかった。

こいつがそんな周りとの壁を作っていたのは、
誰かに感情移入して、学校を離れるのも
辛くないように逃げていただけだったのか。

俺と付き合えないと突き放したのも、
自分が消えてなくなるのも怖いからか。

……馬鹿馬鹿しい。

正直思った。
そんな壁を作っていては、一生孤独からは
逃げられないのに。

でも彼女を責めることも出来ず、俺は
自分自身を責めてしまう。

どうしてこんなに近くにいたのに、
もっと早く気づいてやれなかったのか、と。


「……でも、治るんだろ? その病気」

『治りませんよ』


即答だった。
声のトーンも変えず、暗闇をまっすぐ見つめて。


「何言ってんでィ、このご時世治療法なら
いくらでも……」

『20%』


小さい声で、言い切った。
もう1度何かと問えば、ワンテンポ置いて
丁寧に言葉を紡いだ。


『手術、成功率20%なんです。
もし失敗したら失明どころか体も動かないし、
死ぬかもしれない』


声も体も、僅かに震えていた。
まだ真夏だというのに空気は冷えて、
夜の涼し気な空間は一瞬で氷河期を迎えた。


「でも手術しなかったらどっちみち、」

『だから迷ってるんです、まだ。
日にちは夏休みの最後の日』


夏休み中は入院して治療に専念するそうだ。
その間状態が少しでも良くなれば手術は
見送りになるかもしれないし、
悪くなれば返事の有無を待たずすぐに
腹を切られると。

でもどちらにせよ、状態が良くなるとは
考えにくいから手術は早めにした方がいいと
医師は言ったらしい。


「なら、医者のいうこと聞いとけばいいじゃ
ねぇか。 治らねぇとは限らねぇし」

『20%で希望が持てる訳ないでしょ?』


押し殺したような声で、少し強めに
言い放った。

俺にはどうしようもないのだと
思い知らされた。

こいつが抱えている不安も状況も、
俺には少しもわからない。

掛けてやる言葉も、見当たらない。


『私は手術をしてもしてなくても、学校は
辞めます』


家の門の前に立ち、少しだけ眉を下げて
微笑む。


『貴方と再会できて、本当に良かった。
今までありがとうございました』


そう言い丁寧にお辞儀をして、いつも通り変わらず
何食わぬ顔で家に入って行く。

止めようと手を伸ばした時には遅かった。

俺の右腕は、何に触れることもなく空を切った。

△病院って夜以外は明るくてビックリする→←・



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ももりんご(プロフ) - かみゅいさん» わぁ〜ありがとうございます!(><) (2017年2月25日 13時) (レス) id: 694f30da04 (このIDを非表示/違反報告)
かみゅい(プロフ) - 続編おめでとうございます(*´ω`*) (2017年2月25日 0時) (レス) id: 822ee05d7f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ももりんご | 作成日時:2017年2月20日 22時

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