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『話って何です? こう何度も呼び出されると
私の立場が……』

沖田さんが勘違いしたってことは、他の人も
勘違いしているかもしれない。

自分でも気づいてはいたが、国語準備室に
先生以外で頻繁に出入りしているのは私ぐらいだ。


「いやぁな、ちょっと……」

『どうしたんですか改まって……』


気味悪い、と私は肩を震わせた。

でも先生は少しだけ気まずそうに頭を掻いて、
何かを決心すると私の目を見つめた。


「昨日、病院から電話があったんだよ」


私の表情が一瞬で強ばったのを見ても、
先生はまだ言葉を続ける。


「お前がまだ未成年のガキで重病を
抱えてるくせに親も来ねぇって心配してたぞ」


先生はどういうつもりだ、と私を下から睨む。


「沖田も心配してたぞ、お前が病気なんじゃ
ないかって……アイツ察しいいぞ?」

『先生はいつから気づいてたんですか』

「……ミツバの見舞いに行った時だ。
ミツバが、お前が治療受けてる所を見たって」


それで気になって担任と伝えて看護師に聞けば、
私が病気で通っているという事を知ったと。

納得せざるを得なかったし、今更嘘も
つけないと悟った。

私は眉を下げ、困ったように微笑んだ。

それが逆に、先生を困らせたのだ。

私はいつもそう。
沖田さんも、この表情で悩ませた。


『先生、私、二学期から学校来れません』

「おい」

『ごめんなさい』

「おい!!」


先生は衝動的に立ち上がり、私の肩を掴んだ。

恐らく今顔を上げれば、先生の怒った顔が
すぐに目に映ることだろう。

でもそうじゃない。

逆に先生はもっと困った顔をしている事だろう。

だって、私が涙を流しているから。


『皆には、言わないでください』

「言うわけねぇだろ」


そんな面されたら。

銀八先生は前髪をかきあげて、少し
ため息を付くと再び椅子に座る。

そしてレロレロキャンディを口に含んで、
先端から煙が出てくる。


「……まぁ、なんだ。
どっかのエセチャイナさんから聞いてるかも
知らねぇけどな」


先生は一度逸らした目をすぐにまた戻す。


「俺はお前の担任だ。
お前が悩んでれば分かるし、楽しそうな
顔してればそれが俺も嬉しいんだよ」


先生はまた照れくさそうに少し頬を赤らめて、
ぐるっと椅子を回転して背を向けてしまう。


「まぁ、要は一人で抱え込むなってことだ」


先生はもう用は終わりだ、帰っていいと言った。

私は丁寧に先生の背中にお辞儀をして
教室を出た。

△お祭りで迷子はお約束→←・



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ももりんご(プロフ) - かみゅいさん» わぁ〜ありがとうございます!(><) (2017年2月25日 13時) (レス) id: 694f30da04 (このIDを非表示/違反報告)
かみゅい(プロフ) - 続編おめでとうございます(*´ω`*) (2017年2月25日 0時) (レス) id: 822ee05d7f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ももりんご | 作成日時:2017年2月20日 22時

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