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△最終回 ページ20

『沖田さん』

「あ?」

『もう、卒業ですね』


屋上の端で2人なんで、私達は同じ方向を
見つめていた。

校庭にいる皆は写真を撮ったり泣いたりと
騒がしい様子だ。


「ピアノ、良かったと思うぜ」

『ありがとうございます』


私は照れ笑いながら、卒業証書を
持つ方とは逆の手で頬をかいた。


『沖田さんのおかげズラ。沖田さんがやれって
言ってくれてなかったら、私はもう二度と
勇気も出なくてピアノに触れることすら
できなかった』

「俺は何もしてねぇよ。お前の実力でィ」


そういう沖田さんもお礼を言われて照れているよう。
私はフフッと微笑んで、また外の景色を
見つめ直した。


『……本当、いろいろありましたね』

「そうだな」

『学校、ちゃんと来れてよかった。
普通の女子高生として、この世にいられた』


ツーンと、鼻の奥が熱くなる。
沖田さんはチラッと私の方を見た。


『前までの私だったら、絶対こんな事
言えなかった。
大好きな人と出会えただなんて、そんな事』


頬は熱いのに、それを冷やすように優しい
涙が零れた。

拭う事も忘れて、私はまだ口を開く。


『本当に感謝してもしきれなくて……っ。
……ごめんなさっ、……こういう時
なんて言ったらいいかも、分かんなくてっ』


やっと涙を拭い始めると、隣で沖田さんが
はぁとため息をついた。

なんだとそちらに目を向けると、沖田さんは
一歩下がって両手を広げた。


「ずっと我慢してたんだろィ?
特別大サービスでィ……来いよ」


私は下唇をかんで、再び目に涙を貯めると、
勢いよく彼に飛んで抱きついた。

彼は強く受け止め、私の頭を何度も撫でる。
対して私は駄々をこねる子供のように
泣いて叫んだ。


沖田さんの体温はとても優しく、暖かい。


出来ることならずっと、溺れていたい。



「皆が待ってらァ、行きやすぜ」

『はい!』



彼が差し出した手を強く握った。

そして引かれるがまま、皆のところに走っていく。


「Aさんと沖田さん来ましたよー!」

「Aー! 遅いアルー!」

「Aちゃん、こっちよ!」

「よぉーし揃ったな、それじゃあ……」



3年Z組のみんな、本当に今までありがとう。

こんな素敵なクラスの一員で居られたこと、
本当に誇りに思います。



「「「はい、チーズ!!」」」




これからも、ずっとずっと、


『よろしくズラー!』





おしまい。

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ももりんご(プロフ) - かみゅいさん» わぁ〜ありがとうございます!(><) (2017年2月25日 13時) (レス) id: 694f30da04 (このIDを非表示/違反報告)
かみゅい(プロフ) - 続編おめでとうございます(*´ω`*) (2017年2月25日 0時) (レス) id: 822ee05d7f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ももりんご | 作成日時:2017年2月20日 22時

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