△花になりたい ページ17
「え、手術……受けるんですかィ」
『はい、決めました』
青白く、まだ不安そうな顔でAは少し微笑んだ。
Aは今まで、手術を受けるか相当悩んでいた。
成功率の事も含めているとだいぶ苦しそうに
していた。
そんな彼女がなぜ急に手術を受け入れようと思ったのか。
『実は……やっぱりこのまま放っておいたら
やばい〜って看護師さんに説得されて。
それもあるけど……やっぱり、沖田さんの
おかげズラ』
「俺の?」
俺が一体こいつに何をしたっていうんだ。
毎日見舞いに来ていたことか?
そんなのただ心配というよりも、毎日顔を合わせていないと
急にどこかに行ってしまいそうで
怖かっただけなのに。
俺の手の届く距離にいて、ただ微笑んでいて
欲しかっただけだったのに。
なのに、
『いつも沖田さんが隣で手を握っててくれたからズラ。
私はやっと一歩踏み出せる』
俺はふと自分の手元を見る。
確かにその両手は、しっかりとAの
か弱い手を握りしめていた。
きっと毎日の習慣になっていたのだろう。
今自分がしている行動さえ意図的では
ないのだから。
ただそんな行動が、少しでも彼女の支えに
なれていたのだ。
嬉しくないわけがない。
『でも、でもね……ごめんなさい沖田さん』
突然Aの声が震え出す。
そして目尻に薄く光るものが溢れている。
『全然、感じないの。あなたの感覚』
Aの体は、とっくに弱りきっていた。
気づいていた。 ベッドから起き上がることも、
本当は喋ることさえもキツいことも。
なのに何故、自分の体温だけはこいつに
伝わっていると思ってしまったのか。
俺はもう一度強く握り直した。
「ぜってぇ上手くいく。だから大丈夫だ」
Aはまだ目を潤わせたまま、目だけを
こちらに向けた。
「体温なんて伝わってようがあるまいが、
俺ァこの手を話すつもりはねぇ」
『沖田さん……』
「だから安心して待ってろ。
すぐに楽になる」
お前の身体中に巻かれた鎖は、きっとすぐに
解けるから。
Aは止まらない涙を必死に抑えようと
しながら、弱々しい声で『はい』と呟いた。
こうして、日時はあっという間に過ぎ、
気づけばAの手術当日となっていた。
俺は姉上と病院に向かった。
その頃にはとっくにAとの面談は
出来なかった。
部屋の中にはAの親族のみ。
看護師に聞けば、今日は奏さんと両親も
来ているそうだ。
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ももりんご(プロフ) - かみゅいさん» わぁ〜ありがとうございます!(><) (2017年2月25日 13時) (レス) id: 694f30da04 (このIDを非表示/違反報告)
かみゅい(プロフ) - 続編おめでとうございます(*´ω`*) (2017年2月25日 0時) (レス) id: 822ee05d7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももりんご | 作成日時:2017年2月20日 22時