検索窓
今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:23,781 hit

ページ15

それ以来、Aの病態は悪化する
一方だった。

特に目立ったのは食欲不振。
口に含む事すら難しいのだと、看護師の人が
教えてくれた。

そんな様子を何日もかけてみてきたが、
Aはわかりやすく大分痩せた。


『ごめんなさい、今日も体調良くなくて』

「大丈夫でィ」


不安そうな顔を浮かべる彼女の頭を
撫でてやる。
少しだけ綻ばせた表情が、それまた俺の
心を引っ掻き回すようで。

顔色が悪いのに気が付き、早く休めと
軽く肩を押しながら寝かせる。

申し訳なさそうに、Aはゆっくりと目を
閉じた。

数分後。

コンコン、とノック音が聞こえる。
もう面会時間ギリギリで、こんな時間に銀八達が
来るとも思えず、少し不審に思いながら
扉が開くのを待った。


「失礼致します」


鈴のなるような綺麗な声。
何年ぶりだろうか、この声を聞いたのは。


「……あれ、もしかして総ちゃん……?」

「……奏、さん」


振り返れば、Aによく似た女性……彼女の
姉、奏さんが汗をかきながらもホッとしたように
微笑んでいた。


「お久しぶりね、元気してた?」

「はい」


そうとだけ返事をして、俺は椅子を回転させながら
Aに向き直る。


「ありゃりゃ、私嫌われちゃったかなぁ……」


なんて小さな声が聞こえたが、聞こえないふりを
貫く。


「A寝てるのね、どこか幸せそうで
安心するわ」


俺の隣に立って、また甲高い声で言う奏さんに
苛立ちを覚えるのはなぜだろう。

奏さんは何も嫌味なことは言っていないし、
俺に言いよるようなこともしていない。

なのに何故か、無性に悔しい思いを
するのだ。


「沖田さーん、今日もそろそろ……って、あれ、
珍しいわね」


面会終了時刻知らせるため入ってきた看護師は
奏さんを見るなり少し頬を赤くして立ち止まる。
女が見ても惚れるくらい美形なのだろう。
俺はそう見てないからよくわからないが。

奏さんは少し頭を下げると姉だと説明する。

看護師との話が終わったあと、俺と奏さんは
病室を後にした。


「私はこの後家に一旦帰るつもりなのだけれど、
あなたはどうするの?」

「……奏さん、もし時間あるなら、ちぃと
付き合ってくれやせんか。
話したいことがあるんでさァ」


目線はさほど変わらないが、少しだけ彼女を
見下ろす感覚で言う。
奏さんは「もちろん」と、笑って見せた。

俺と奏さんは、近くにあったファミレスに
入った。

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (31 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
48人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ももりんご(プロフ) - かみゅいさん» わぁ〜ありがとうございます!(><) (2017年2月25日 13時) (レス) id: 694f30da04 (このIDを非表示/違反報告)
かみゅい(プロフ) - 続編おめでとうございます(*´ω`*) (2017年2月25日 0時) (レス) id: 822ee05d7f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ももりんご | 作成日時:2017年2月20日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。