検索窓
今日:4 hit、昨日:3 hit、合計:23,784 hit

ページ14

入院生活二週間目が終わり、第三週目に
入る日。

カーテンを開けて、少し日差しを部屋に迎える。
クーラーもようやく使いこなせるようになり、
今は部屋の中がいい感じに涼しい。

あまり温度を低くしすぎると看護師さんに
怒られてしまうので、そこは自重しながら
なんとかこの生活にも慣れてきた。

そんな調子でいつも通り眼鏡をかけて
本を読んでいると、コンコンとノックが聞こえた。


『はーい』

「入るぞー」


いつも聞く声と違う声。
このだるくて重いやる気のない死んだ魚のような
声は、担任の銀八先生の声だ。


「俺お前になにか恨まれるようなことしたか?」

『自分の行動を振り返ってください』


少し強めに言うと先生はため息をついて
こちらに近づいてきた。
花瓶に花を数本差し込むと、近くにあった
椅子に座った。


「どうだ、楽しいか」

『楽しいって言ったら嘘になるけど……
まぁ何事も無いですよ。
沖田さんも来てくれますし』

「そうか」


先生は満足そうに腕を組んで頷いた。
そんなこんなで他愛のない話をしていると、
数分してからまたノック音が聞こえる。


「あり、珍しく先客がいまさァ」

「おぉ、彼氏の登場か」


先生の微妙な嫌味に対応することすらしないで、
沖田さんはチラッと後ろを見る。


「さっさと入ってきな」

「なんでお前に命令されなきゃいけないネ!」

「神楽ちゃん、病院では静かにね!」


久しぶりに聞いた声が聞こえると、何人かの
足音も聞こえてくる。
すると声の主たちが扉から姿を現す。


『神楽ちゃん、新八君!』

「A〜寂しかったアル〜!」

「お久しぶり……って夏休みだし当たり前ですよね」


神楽ちゃんは走って飛びついてくるなり、
私を強く抱き締めてくる。
苦しいという素振りを見せると、新八君が
無理矢理神楽ちゃんを引き剥がしてくれた。


『どうしてここに?』

「沖田さんが教えてくれたんです。
神楽ちゃんもずっと心配してて落ち着かない
様子で大変だったんですよ?」


毎日家に来て暴れ回って……と新八君は
スランプな表情を浮かべた。
私は神楽ちゃんの頭を撫でながら哀れな
顔で見ることしか出来なかった。


「そろそろおめぇも話し相手が欲しい
頃だと思ってよ」


感謝しろよ、と沖田さんは偉そうな顔を浮かべて
ぷいっと横を向いてしまう。

照れているんだな、と直感で感じた。
まだ私何も言ってないのに。


『ありがとうございます』


私がそう微笑むと、皆も笑ってくれた。

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (31 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
48人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ももりんご(プロフ) - かみゅいさん» わぁ〜ありがとうございます!(><) (2017年2月25日 13時) (レス) id: 694f30da04 (このIDを非表示/違反報告)
かみゅい(プロフ) - 続編おめでとうございます(*´ω`*) (2017年2月25日 0時) (レス) id: 822ee05d7f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ももりんご | 作成日時:2017年2月20日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。