【図書館戦争】今日も会いに行きます (ページ5)

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火曜日、丸一日授業が入っていたはずだったのだが、先生の身内に不幸があり急遽休みになった。

授業は１限だけでいつもより早く終わったのはいいが、とくにすることもないので今日も図書館へ向かう。

館内へ入ると長身でイケメンの男性がちょうどブックトラックを押しながらあちこちへ移動していた。

「こーまっきさんっ！」

あまり大きな声は出さず、しかしよく聞こえるくらいの声量で声をかけると、営業用の表情からそれなりに親しい人用の表情に変わる。

まったく驚いている素振りは見せなかったので、近づいてくる気配がしていたのだろう。

「Aちゃん、いらっしゃい。今日は早いね」

「２限から休講になったので、時間あるし本でも読もうかと。それで小牧さんのオススメはないかと思いまして！」

「オススメか……あ、でも俺でいいの？堂上あっちにいるよ？」

「さすがに毎回お願いするのはちょっと……それに、小牧さんのオススメも読みたいです！」

「ハハ、分かった。ちょっと待っててね」

トラックを押して配架しながらどこかへ上の階のほうへ消えていく。

近くにあった棚から一冊取り出して流し読み、それを何度か繰り返した頃、一冊の本を片手に小牧さんが戻ってきた。

「お待たせ。これなんだけど、読んだことある？」

「ううん、初めてです」

「じゃあ読んでみて。後で感想聞かせてね」

本を受け取って、軽く手を振って去っていく小牧さんを見送ってから、近くにあった椅子に腰掛けさっそく１ページ目を開いた。

この小説の主人公は、所謂『普通の人には見えないものが見える』というやつ。

その能力を使って事件を解決する、というような話らしい。

最初の数ページでもう引き込まれ、気がつけば最終ページまできていた。

最初は自分以外の人を拒絶していた主人公。

強引に捜査に協力させられてそこから次第に少しずつ心を開き受け入れていく。

そんなところが面白いし、何より表紙の絵がカッコいい。

この本には１と書いてあるからきっともっとシリーズが出ているのだろう。

検閲がなく本がもっと安く手に入る世の中だったら、確実に全巻買って揃えるのに。

いや、そうなったらわざわざ図書館に行かないで買い揃えることで済ませてしまう。

それはダメだ、なんて私の心の中は矛盾だらけ。

せっかく時間もあるんだから続きも読もうと立ち上がった瞬間、小さくお腹が鳴った。

慌てて辺りを見回すが聞こえていそうな範囲に誰もいない。