欠片133 ページ10
目を覚まして時計を確認する。時刻は5時00分3秒
音を立てずに部屋を出て洗面所に向かい、身支度を整える。メンチに置き手紙を残して廊下に出る
さて、クラピカはどこにいるだろうか。受験者に与えられた寝るだけの部屋を一個一個覗いていくしかあるまい
ああ、でもその部屋のどれかに道化師がいたらどうしよう。面倒事になるのは必然だ
朝日が差し込んでいる廊下に影が落ちる。床に向けた視線を上げた
「やぁ」
思わず息を呑み込んだ
朝だというのにその人の周りだけが昏かった。黒い髪の毛は光を反射することがなく、ただただ濡れ羽の鴉みたいだ
――――殺し屋の闇人形
「久しぶり」
『……試験には最初からいましたか?』
「うん。もちろん変装はしてたけど」
と、するともう一人の念を使える針を顔中に指しているあの男性か。私は気付けなかった
クラピカと一緒にいるせいで平和ボケしている。良くない傾向だ。此処には道化師もいるというのに
「オレの名前、覚えてる?」
唐突な質問に身じろぎをしてしまった。追いつめるかのように彼は繰り返す
「オレの名前を言ってみて」
彼の名前を私を覚えていない。それは不要な情報であり、また覚えていて利益のないものだからだ
『記憶をしていません』
「……そう。じゃあ聞くけど“クラピカ”って仇名?」
『クラピカは本名です』
「なんで?人の名前は覚えられないんじゃないのか」
『彼は私の記憶の糸口になってくれますから。信頼関係を築かなければなりません』
頬を裂いて針が壁に突き刺さった。一拍遅れて細く血が流れだす
「キミは知らない」
『何を』
「キミがヒソカの記憶を消した後、アイツは何回もオレのところに来たよ。“Aとは誰か”。何回も、何回も」
――――道化師に私の情報を与えたのは誰だ?
それは私のことを知っていて、なおかつ私のことを探している人でなくてはならない
そして私が生きていることを知っている人。しかし私にまだ会っていない人
十中八九、蜘蛛の人間だろう。その中で可能性がないのは“掃除屋”だ
彼女は私のことを殺そうとしていた。しかしそんなことをすれば道化師に阻止されるのは必須。また、私に敵意を向けていたシャルナークもだ
『クロロ、ですか』
胸の内が震える。その可能性だけで私はまだ希望を持てる
『クロロが私の情報を道化師さんに――――』
額を目がけて鋭利な針の先端が飛んできた
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イチゴ(プロフ) - ゆきポンさん» ごめんなさい。今から2週間ほど、学校生活が忙しくなるので更新が遅くなってしまいます (2016年9月9日 20時) (レス) id: ecd6285e40 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴ(プロフ) - せいちゃんさん» コメント、ありがとうございます!とても励みになります (2016年9月9日 20時) (レス) id: ecd6285e40 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきポン - 続編楽しみです!! 毎日の癒しです~(σ≧▽≦)σ (2016年9月9日 15時) (レス) id: 37851f8854 (このIDを非表示/違反報告)
せいちゃん(プロフ) - 初めてコメントします!ちょっと前から見させてもらってます!!このアプリの中でも1番好きです!!これからも頑張ってください(´˘`*) (2016年9月8日 22時) (レス) id: 88c86e64d1 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴ(プロフ) - ゆきポンさん» いつもコメントありがとうございます!ちょっと更新してきますね (2016年9月4日 15時) (レス) id: ecd6285e40 (このIDを非表示/違反報告)
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