欠片132 ページ9
「……時々、Aが遠くにいるように見える」
毛布にくるまりながらクラピカは呟いた。レオリオは目を瞑ったまま、静かに彼の言葉を聞く
「私以外の誰かを見ている。瞳の中には私がいるのに、視線が来ないんだ」
寒さを凌ぐように毛布を握りしめる。この手を握りしめてくれたあの人は何を思っているのだろうか
どうか、私のことを考えていてほしいと願う。自分の過去にではなく、此処に存在する私を
「当初、この関係は契約だと言われたよ。私の隣にいさせてさえくれれば、私を護ると。私の望むことならば叶えてみせると」
レオリオが薄目を開けた。そのまま宙をぼんやりと見ながら告げる
「……それでも、一緒にいてくれるんだろ。Aは価値のないと判断した奴には目もくれねぇような人間だ」
「私に価値を見出しているならば、それは彼女にとって私が利用しがいのある存在だからだ。しかしAは不明瞭なことを言うばかりでな」
「なんて言ってんだ?」
「占い師に告げられたらしい」
レオリオが小声でなんだそりゃ、と溜息を吐いた。クラピカは苦笑を浮かべながら続ける
「絶対に当たる占いにそう書いてあったらしい。記憶を取り戻すための存在がこの私だと」
「でもまだアイツの記憶は戻ってない……」
「それにここ最近はどこか焦っているように見える。ヒソカのせいかもしれないが」
不意に涙が出そうになって目頭を覆う
「怖いんだ。絶対に来る別れが」
絶対に避けられない道。彼女の記憶が戻った瞬間と共に訪れるもの
その時、Aは私から離れて蘇った記憶の中の人の元へと行くのだろう
「記憶が戻らなければ、と何度も何度も呪った。そうするしかなかった」
一族が殺され、1人になって。孤独を強いられたときに手を差し伸べたのはあの人だ
「どんな関係だったとしても、“私の過去”は偽りではない。彼女との幸せは、ちゃんと温度を持っているんだ」
それがどんなに苦しいことか。いっそのこと、冷たくしてくれれば良かったものを
「……もう寝ろよ。明日も試験はある」
レオリオがそう投げかけてきたので素直に目を閉じる。瞼の裏の暗闇を見ていたら酷く安堵できた
「おやすみ」
隣の友人ではなく、この場にはいないAに呼びかける
明日になればまた彼女に会えるという希望で生きているのだと、ようやく理解した
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イチゴ(プロフ) - ゆきポンさん» ごめんなさい。今から2週間ほど、学校生活が忙しくなるので更新が遅くなってしまいます (2016年9月9日 20時) (レス) id: ecd6285e40 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴ(プロフ) - せいちゃんさん» コメント、ありがとうございます!とても励みになります (2016年9月9日 20時) (レス) id: ecd6285e40 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきポン - 続編楽しみです!! 毎日の癒しです~(σ≧▽≦)σ (2016年9月9日 15時) (レス) id: 37851f8854 (このIDを非表示/違反報告)
せいちゃん(プロフ) - 初めてコメントします!ちょっと前から見させてもらってます!!このアプリの中でも1番好きです!!これからも頑張ってください(´˘`*) (2016年9月8日 22時) (レス) id: 88c86e64d1 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴ(プロフ) - ゆきポンさん» いつもコメントありがとうございます!ちょっと更新してきますね (2016年9月4日 15時) (レス) id: ecd6285e40 (このIDを非表示/違反報告)
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