欠片163 ページ45
「見えるようになったらおいでよ。大丈夫。Aが教えてくれるだろうさ」
こちらを振り返ったクラピカに対して私は頷いた
『先に宿に戻っていてくれ。私はもう少し話がある』
クラピカが出て行き、2人きりになった空間で先に口を開いたのは彼女だった
「驚いたよ。てっきり新しいパートナーを連れて仕事を探しに来たのかと」
『私も驚いていますよ。まさかこんな場所に私のことを知る者がいるとは』
しかし思い出せない。今まではある程度の関わりがある人に会ったら思い出せていたのに
だから彼女はきっと私にとって重要な人物ではなかったのだろう
「表情筋が死んでいるところも変わってない。……なぁ、本当に記憶がないのかい?」
『はい』
「だからか。実はね、黒髪男が一回だけ此処に来たんだよ」
クロロが、此処に
無いはずの心臓が高鳴る。心臓がない、という事実に直面した後だというのにそれでもこの身体は勘違いを続けている
「アンタがあの男を振って逃げて、男が探しに来たんだよ思ってたよ。今日までは」
『まさか』
「だろうね。だってアンタらは気持ち悪いほどに信頼しあっていた」
純粋に嬉しかった。クロロと私がそんな関係であったことが、どうしようもなく嬉しい
「アンタ、自分がどんな立場にいたのかも忘れたの?」
『いいえ。それは思い出しましたよ』
幻影旅団、と唇だけで紡ぐ。その瞬間に彼女は顔色を変えた
「じゃあ、あの坊やは」
『彼は私達に怨みを抱いている。彼ならば、いつかクロロとも対峙できる』
「……バカなことやってんねぇ」
『効率は悪いし、成し遂げられない可能性もあります。しかしこれしか道がない。手探りで行くよりは』
「本当に、大馬鹿だよ」
彼女がデコピンで私の手の甲を弾いた
「どうせ冷徹になりきれてないんだろ?」
『まさか』
「見てれば分かるよ。アンタは上客だったんだ。アンタにとって私はどうでもいい存在だったけど、あたしはアンタのこと大事だった」
息が詰まる。愛おしむような視線が私に向けられていた
「記憶がなくても、自分を傷つける道を進むんだ」
『違う。違うんです。私はあの子を利用している。クロロのことを思い出せたらいつでも捨てる』
もう帰んな、と言われた。なので踵を返してドアノブを掴む
「そんな苦しそうな顔して言われても説得力がないんだよ」
後ろから飛んできた声に、唇を噛むことしか出来ない
何回も噛んだそこから血が流れて、鉄の味がした
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イチゴ(プロフ) - ゆきポンさん» ごめんなさい。今から2週間ほど、学校生活が忙しくなるので更新が遅くなってしまいます (2016年9月9日 20時) (レス) id: ecd6285e40 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴ(プロフ) - せいちゃんさん» コメント、ありがとうございます!とても励みになります (2016年9月9日 20時) (レス) id: ecd6285e40 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきポン - 続編楽しみです!! 毎日の癒しです~(σ≧▽≦)σ (2016年9月9日 15時) (レス) id: 37851f8854 (このIDを非表示/違反報告)
せいちゃん(プロフ) - 初めてコメントします!ちょっと前から見させてもらってます!!このアプリの中でも1番好きです!!これからも頑張ってください(´˘`*) (2016年9月8日 22時) (レス) id: 88c86e64d1 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴ(プロフ) - ゆきポンさん» いつもコメントありがとうございます!ちょっと更新してきますね (2016年9月4日 15時) (レス) id: ecd6285e40 (このIDを非表示/違反報告)
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