演技せよ【HUNTER×HUNTER】 (ページ35)

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feticide ページ35

「……だよねぇ♠」

独りで木に凭れかかりながら指先でトランプをくるくると回してみた。描かれたジョーカーがピエロのようだ

ずっと、ずっと、ずっと。Aを探してきた。そのためにクロロと２人きりになることがあったけど、襲わずにいた。Aに会いたかったから、彼と戦うことは二の次になっていた

そして再会した。驚くほどに呆気ない。そういえば、記憶を消された時もこんな感じだったような気がする

「髪飾り❤」

つけていてくれた。外そうと思えば外せたし、捨てることさえできたのに。この３年間、彼女はボクのことを忘れないでいてくれた

関わる人間は強者以外、大体は殺してしまう自分が愛しい人の重要人物になっている

Aの愛しているボクは本当にボクのだろうか。自分が自分でないような、不思議な気分

「あ、イルミ♦」

「何やってんの？気持ち悪い。試験は終わったよ」

「早いねぇ♣誰か殺したのかい？」

「オレじゃなくてキルだよ。やっぱりあの子は根っからの人殺しだ」

「楽しくなってきたね♣」

「今から説明会だってさ」

「うーん❤めんどくさいね♠帰っちゃダメ？」

「ライセンスが要らないならいいんじゃない。じゃ、オレは行くから」

ライセンスが手に入らないのなら何のために試験を受けたのか分かったもんじゃない

重たい腰を持ち上げて説明会場とやらに入った。適当な席に座って欠伸をかく

Aの姿が視界の端に入った。彼女は相変わらずの無表情で座っている

ああ、この説明が終わったら九月までは会えないのだ。合えたとしても、彼女はきっとクロロしか眼中にないだろう

「……失恋❤」

誰にも聞こえないような小声でそう呟いてから自嘲気味な笑みを浮かべてしまう

恋？縛りあげて閉じ込めて。誰の目にも、誰の手にも触れないようにしたいこの気持ちが？

そんな馬鹿な話はないだろう。これは単なる欲だ。執着だ

自分の人間らしい部分が漏れて、どうしようもなくなって、収まらなくなっただけだ

だからそんなモノには今日限りでバイバイ。慣れない物は棄ててしまおう

「ガム解除♦」

３年前からずっとAの髪飾りにつけていたバンジーガムを消す。これであの髪飾りは簡単に壊れるようになった

彼女への執着はいずれ来るクロロとのバトルの時にどうしても邪魔になる

どうせ手に入らないのなら、いっそ――――

握っていたトランプが音を立てて破れた