原罪

妨げるな ページ24

明らかに不機嫌だとわかるような低い声

殺気が滲み出ている、と感じるのは気のせいだろうか


『誰ですか…………目覚ましなんていう人類最恐の兵器を仕掛けたのは………………』

「「「「「トワです」」」」」

「ちょ、キミ達！！」


問答無用へAの前に押し出されたトワ

虚ろな、まるで死んだ魚の様な瞳で睨んでくるAにはもう冷や汗を流すしかない


『一回あなたも体験してみればいいんですよ…………心地良い眠りを爆音によって妨げられる不快感を』


ふと、眠気が彼を襲った。身体を襲う程よい倦怠感に身を任せてしまいそうになった

必死に眠らないように意識を保とうとするが、眠気は増していく


そう、Aのこの眠そうな目を見ていると眠気がこちらにも襲ってくるのだ


彼は落ちていく意識の中で確信する



――――彼女の持つ能力はやはり“睡眠(ヒュプノス)”なのだと


周りから聞こえる音が遠ざかり、視界が狭まっていく


そして、彼は床に倒れた。聞こえてくる安らかな寝息が彼が完全に熟睡していることを表している


Aはそれを見下してから声を発した


『目覚ましアプリ発動。１０秒後に音声レベル５で。対象は朝霧永久』

〈了解致シマシタ〉


空中に現れたアプリホログラムが最大音量である“５”を示して動き始める

カウントダウンが始まり、数字が減っていく


数字が“３”を示した時、Aは耳を塞いだ。それにつられて他のみんなも耳を塞ぐ



“０”


その瞬間、耳を塞いでいて良かったと思えるような大音量が響き渡った


飛び起きるトワ。それを確認して目覚ましアプリは消える


『さて……これを毎日やってあげましょうか？』

「いや、結構だよ！」

『では今後一切、あたしの眠りを妨げる行為はやめていただきたいですね』

「あぁ、もちろん」


眠りを妨げられることがこんなにも不快なことだとは思わなかった

寝起きは良い方だが、これにはどうも慣れる気がしない


『あ、皆さんおはようございます』


頭を下げたAは一つ、欠伸をした

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