花が咲く ページ44
『……寝た、か？』
少し経つと先程の火をつけたような騒ぎは何処に行ったのやら、ミルキ様は安らかに寝息を立てて眠ってしまった。
『ふふ、愛しいなあ。私の弟はこんなにも可愛い』
雪がほどけるような柔らかい、春の日差しのような微笑みはとても暗殺者のものとは思えないほどに穏やかだ。
『ゴトー、助かったぞ。私は兄弟が泣くのが一番嫌なのだ。イルミやミルキが泣き止んでくれるなら、私は何でもする』
「全てはA様のお力故ですよ。私は何もしておりません」
再び跪いて頭を下げるオレを見て静かな声を彼女は出す。
『執事というのは難儀な生き物だな。いいか！私の前でそれはやめろ』
「と、仰いますと……」
A様はゆっくりと寝た赤子を起こさぬようにその握られた指を抜いた。そしてその手をそのままオレの頭の上に持ってくる。
『誇れと言ったのだ。私に褒められたらその分だけ自分は他の執事よりも優れているのだと傲慢になれ！これは命令だ』
この年になって頭を撫でられるなど。しかもこんな小さな少女に。
ああ、それでも。身体中が歓喜に打ち震える。指先にでさえも鼓動が響き、漏れそうになる声を熱い息として肺から押し出す。
「かしこまりました」
『ふふ、良い執事だ。ゴトー、お前は執事長にでもなれるぞ』
「そんな畏れ多い……」
『なってもらわんと困るのだ！いつかあのツボネをぎゃふんと言わせろ！』
大先生にそんな真似ができる日々は訪れるのだろうか。そう思ったがそれが命ならば果たすのが執事。
それがオレだ。
そう誓ったのはもう１０年も昔のことかと驚きつつも、気を乱すことなく紅茶を入れる。A様の好きな茶葉で入れた紅茶をA様の飲みやすい温度まで下げてからティーカップに注いで運ぶ。
『御苦労。やはりお前の入れる紅茶が一番だ』
「お褒めに預かり光栄でございます」
『この味、この温度。一生忘れるなよ。お前以外にこれを入れられる奴はいないのだからな』
主がそう命じるのならばその様に。
ただ、その主が遠くへ行ってしまったらどうすればいい。飲む相手のいない紅茶は冷めて不味くなるばかりではないか。
『……安心しろ。いくら家出したとは言っても時々は戻ってくる。その時にこの紅茶があればいいのだ』
そんな心を読まれたらしく、A様はそんなことを仰る。情けないやら恥ずかしいやらで更に深く頭を下げた。ああ、やはりこの方には敵わない。
春告鳥がどこかで一声鳴いた。
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だいふくさん(プロフ) - 展開、夢主ちゃんの念能力の設定とても凝っていて凄いなと思いました。クロロの頭目らしい余裕ある思考や振る舞い、フェイタンの少し不器用なところがたまらんです。イチゴさんの文章がとても好きです（語彙力無くて上手く表せないのですが）。これからも応援しています (2019年1月31日 21時) (
レス) id: e941665527 (このIDを非表示/違反報告)
コンパイルエラー(プロフ) - 続きが早く読みたい！ (2019年1月21日 14時) (レス) id: 8e7827f170 (このIDを非表示/違反報告)
舞(プロフ) - 楽しみに待ってます！ (2018年10月21日 19時) (レス) id: 2f8f38bf2c (このIDを非表示/違反報告)
南雲藍琉(プロフ) - 続編、それも原作沿いとわかり、狂喜乱舞しております。主の性格も、回りとの関係性も大好きなのでとても嬉しいです。3月４月？勿論待ちますとも。イルミとクロロとの会話でニヤニヤしました。 (2018年10月7日 19時) (レス) id: 2e644448cf (このIDを非表示/違反報告)
琥珀くん(プロフ) - 復帰楽しみに待ってます。イチゴさんの作品は全部好きで読ませてもらってます。この作品も大好きです。続きが読める日を楽しみに待ってます！ (2018年10月7日 14時) (レス) id: 2f4db1a1c5 (このIDを非表示/違反報告)
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