�� ページ31
『親父殿、覚悟！』
聞き慣れた声と決して冗談では済まされぬ殺気。Aお得意の、死角である上からの襲撃を避けてその腕を掴み、地面に叩きつけようとした。
しかし両足で腕を締め付けられ、逆に囚われる形となる。ぎりぎりと筋肉が軋む音がした。このままでは使い物にならなくなってこの右腕は切らなければならなくなるな、と他人事のように考える。
『探したのだぞ、親父殿！』
「襲撃時に声さえ出さなければ左腕くらいは奪えたかもしれなかったな。なぜ毎度毎度大声を出す」
『貴殿と話があるからだ！』
その言葉に腕の力を緩める。すると蛇のように絡みついていた足はするりと抜け、とん、と地面についた。
『ミケの餌やりを自らとは、老けたか？』
「お前こそここにいるということは家出は失敗か」
『いいや、成功した。私はゾルディックから逃げ切ったぞ！』
少しだけ己のとは色合いの違う髪が風に靡いた。それを邪魔そうに耳にかけ、Aは続ける。
『親父殿。今回の件、“単なる家出”で済ましては貰えないだろうか』
頼む、と腰から身体を折って頭を下げた我が娘を見て思わず瞳孔が開いてしまう。想像すらしたことの無い光景に少しだけ動揺した。
その豊かな感情を殺せと命じられた時も。御法度である家族間での殺しをいつもいつも唱えていて仕置をくらった時も。絶対に屈さなかったAが、背を曲げている。
「どういう風の吹き回しだ。契約は成立、お前は自由だ」
『ああ。そうすることも出来るだろうな』
「なぜそうしない」
Aが表を上げる。その瞳から発せられる視線にはいつものような底冷えのする怒りはない。
『イルミが、泣いた』
そしてたった一言、それだけを言った。
『あいつを泣かせる奴など死ねばいいし、あいつを泣かせるような事柄など私が全て取り去ってやる』
「……まさか、いつもオレの命を狙っていたのは」
『幼い頃、いつもイルミを泣かすのは親父殿だったからな』
今、オレは呆れているのか。驚いているのか。退化した感情が追いつかなくてただ目の前のAを見つめる。
『でもあいつはもう親父殿には泣かされなくなった。それに、私との約束も……忘れていた。だから私は安心を感じ、絶望に心を浸しながらこの家を出たのだ』
「ゾルディックが嫌いか」
『ああ、嫌いだ。大嫌いだ！こんな因習、潰れてしまえばいい』
その身が何にも耐え切れぬような頃からゾルディックに抗い続けてきた娘が叫ぶ。
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だいふくさん(プロフ) - 展開、夢主ちゃんの念能力の設定とても凝っていて凄いなと思いました。クロロの頭目らしい余裕ある思考や振る舞い、フェイタンの少し不器用なところがたまらんです。イチゴさんの文章がとても好きです（語彙力無くて上手く表せないのですが）。これからも応援しています (2019年1月31日 21時) (
レス) id: e941665527 (このIDを非表示/違反報告)
コンパイルエラー(プロフ) - 続きが早く読みたい！ (2019年1月21日 14時) (レス) id: 8e7827f170 (このIDを非表示/違反報告)
舞(プロフ) - 楽しみに待ってます！ (2018年10月21日 19時) (レス) id: 2f8f38bf2c (このIDを非表示/違反報告)
南雲藍琉(プロフ) - 続編、それも原作沿いとわかり、狂喜乱舞しております。主の性格も、回りとの関係性も大好きなのでとても嬉しいです。3月４月？勿論待ちますとも。イルミとクロロとの会話でニヤニヤしました。 (2018年10月7日 19時) (レス) id: 2e644448cf (このIDを非表示/違反報告)
琥珀くん(プロフ) - 復帰楽しみに待ってます。イチゴさんの作品は全部好きで読ませてもらってます。この作品も大好きです。続きが読める日を楽しみに待ってます！ (2018年10月7日 14時) (レス) id: 2f4db1a1c5 (このIDを非表示/違反報告)
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