▼懐かしの ページ6
入学式が終わり、二日くらいたっただろうか。
午前の授業がおわり、昼も食べ終わったのでなんとなくあまり人気のない中庭に行った。
ガチャン、と自販機の音がすると黒髪の目つきの悪い男子生徒が『ぐんぐんヨーグル』と書かれた紙パックの飲み物を取り出していた。おいしいよね、俺も好き。
背高いな…。自販機と大して変わんないじゃん。
え、てかなになになんで近づいてきてるの。顔怖いよ目つき悪いしこわいこわい。
肩を掴まれる。
いてえ。マジいてえ。俺の華奢な身体が壊れちゃう。
「な、なに…?」
「Aさんっすよね!??」
え、あ、思い出した。コイツ影山だ。北川第一のとき及川にすっげえ着いていってた奴。
コイツの中学最後の大会、大地とスガと龍と見に行った。中学のときはほとんど話さなかったけど。
「あー…影山、だっけ?北川第一の『コート上の王様』。」
『コート上の王様』という単語が出た瞬間、影山の肩がビクッと跳ねた。何コイツ面白い。
「そ、その名前、やめて下さい。」
「嫌だったか?ってかなんで俺の名前知ってんの?」
「及川さんのサーブ取ってましたよね。俺、そっからAさんに憧れてて、それで…」
あー…及川の自主練よく付き合ってたからか。俺マネージャーだったけど。
「あのレシーブ、Aさんやっぱバレー部なんですか!」
「いや、俺はバレー部だけどマネージャーなんだよ。」
「そうなんすか!?なんかもったいないっすね。」
似たようなこと日向に言われたな。なにシンクロ?
俺が選手にならない理由。単純だ、『めんどくさいから』。
なんなら選手になろうとして旭に止められたくらいだ。折れそうだって、ひどい…。
「影山はやっぱバレー部に入んの?」
「はい!今日から体験入部っすよね。」
「そうだな。」
話題が途切れ、沈黙が続くかと思うとタイミング良く昼休みの終わりを告げるチャイムが響き渡った。
じゃあ、またあとで、と影山が手をあげて走り去っていく。
俺は影山の背中を見届けてから自分の教室へ戻った。
6人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ことり | 作成日時:2015年3月7日 15時