▼Extra edition 1 ページ27
『……』
zm「なぁ、早く言いや」
静まり返った人の疎らな放課後の図書室。
声を潜めたゾムの声はいつもより少しだけ低くて、そしてその声音は意地悪く笑みを含んでいるから、私は決してゾムが言わせようとしている言葉を口にしない。
私の背後に立つゾムを無視して本棚に手を伸ばすも、相変わらず届きそうにない場所に保管されている本。
そんな私を見てゾムはずっとニヤニヤしている。
苛立ちと悔しさと恥ずかしさ…そんな色んな感情を込めてゾムを睨むけど、それはゾムには逆効果で満足そうな顔をしているから余計に私の苛立ちは増していく。
踏み台が壊れていて使えない事を知っているゾムは、私に『あの本取って』と言わせたくて仕方が無い様子で、私も最初から素直に頼めば良かったものの、半ばヤケになってしまった手前頼みづらくなってしまった。
正直この本を借りるのが今日じゃなくても良い。
だけど、その本が生徒の中で話題になっているもので、返却されてもすぐに貸出中になってしまい、中々読む事が出来ないって事もゾムは知っていて、その本をどうしても私が読みたいって事まで知ってるからこその意地悪さ加減。
『……ゾム』
私は諦めてゾムの名前を呼ぶ。
『…ゾム』
ほんのり頬を染めて不服そうな顔をするAちゃん。
zm「ん？」
やっと頼ってくれる気になった事が嬉しくて、緩みそうになる頬を堪えた。
『あの本…取って下さい』
…敬語は反則やろ。可愛すぎんねん。
zm「ふっ…よく言えました」
Aちゃんの目当ての本に手を伸ばせば余裕で届いて、Aちゃんと自分の身長差に意識させられる。
俺が本を差し出せば
『ありがとう、ゾム』
なんて…そんな可愛く笑うんやめぇや。
ほらアイツ。Aちゃんの事めっちゃ見てるやん。
Aちゃん可愛ええやろ？でも渡さんで。俺の方が好きやから。
zm「それ借りて早う帰ろうや」
『ちょっと、そんな引っ張らないでよ』
1秒でも早くアイツの視界の中からAちゃんを消したくて、俺はAちゃんの腕を引っ張りカウンターに連れて行く。
俺って嫉妬深いねん。
Aちゃんは、ただ俺がAちゃんの事利用してるだけだと思ってるかもしれへんけど、Aちゃんの事好きやねん。
『ゾム帰ろ』
君と結ばれる事が叶わなくても、俺の名前を呼んでくれるだけで、一緒に帰れるだけで、隣で同じ時間を過ごせるだけで…こんなにも幸せなんだ。
zm「手繋いでもええ？」
『え、嫌だ』
…手繋げたらもっと幸せなんやけどな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 130人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
呉城 莉李。(プロフ) - さくさん» さく様コメントありがとうございます(*^^*)テスト期間はストレス溜まりますよね、お疲れ様です。番外編などでもう少し続いていくので、もしお暇はお時間ありましたら、お読みいただけたら幸いです(_ _*)) (2022年11月23日 10時) (
レス) id: 7f13b99d76 (このIDを非表示/違反報告)
さく - ええ話ですね。つづきがあるかもですが、ひとまずよかったです！読むはじめて損しませんでした！テスト期間でイライラすることが多かったのですが素敵な話でスッキリしました。またちょくちょくみに来ます。大好きです。 (2022年11月22日 21時) (レス) @page22 id: 7d60a27ef9 (このIDを非表示/違反報告)
呉城 莉李。(プロフ) - ひよこさん» ひよこ様コメントありがとうございます(*^^*)嬉しいお言葉ばかりで、私もひよこ様のコメントに泣きそうになりました。お時間いただきありがとうございます！もうすぐ完結なので、またお暇な時にでも覗いていただけましたら幸いです(_ _*)) (2022年10月21日 22時) (レス) id: 4f45722e46 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ - 初コメント失礼します。今日初めて読んだのですが、泣きました。号泣しました。こんなに心に刺さったのは初めてです。本っっっ当に大好きです、更新楽しみにしています！ (2022年10月21日 21時) (レス) id: 82efcbbf1e (このIDを非表示/違反報告)
呉城 莉李。(プロフ) - ねう。さん» ねう。様コメントありがとうございます！私も自分で執筆していて完結に近付いていくのが寂しく思っていたので、そのお言葉とても嬉しいです(；；)！更新頑張りますね！ありがとうございます(*^^*) (2022年9月26日 7時) (レス) id: d747e32ce0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：呉城 莉李。 | 作成日時：2022年9月22日 12時
